判例タイムズ1420号で紹介された最高裁の決定です(平成27年8月25日決定)。



地味な争点ではありますが、法曹実務家にとっては割と切実な問題で、刑事訴訟の公判期日が行われた場合の公判調書(特に、尋問が行われた場合の問答を記載した調書)の作成が判決宣告後になっていても構わないという刑訴法48条3項の規定が憲法31条が定める適正手続に反しないかということが問題となったものです。



刑事訴訟法第48条  公判期日における訴訟手続については、公判調書を作成しなければならない。
○2  公判調書には、裁判所の規則の定めるところにより、公判期日における審判に関する重要な事項を記載しなければならない。
○3  公判調書は、各公判期日後速かに、遅くとも判決を宣告するまでにこれを整理しなければならない。ただし、判決を宣告する公判期日の調書は当該公判期日後七日以内に、公判期日から判決を宣告する日までの期間が十日に満たない場合における当該公判期日の調書は当該公判期日後十日以内(判決を宣告する日までの期間が三日に満たないときは、当該判決を宣告する公判期日後七日以内)に、整理すれば足りる。


民事でも刑事でも、尋問が行われる際には、裁判官から「質問と答えが重なるとテープの録音が重なってしまうので、質問が終わってから答えるようにしてください」という注意を受けた上でスタートすることが多いものです。



尋問後、尋問で行われた問答の一つ一つがテープ起こし(速記の場合は速記録を起こして)されて尋問調書が出来上がってきます。テープ起こしの場合には外部の業者に委託されて出来上がるまでに1ヶ月くらい、速記の場合はもっと早くて2週間くらいで出来上がることが多いようです。



尋問調書が出来上がってから、じっくり弁論したとい思っても、尋問調書が出来上がっていないことには参考にするべき尋問調書が手元にないということになります。



本件は、寝たきり状態の妻を介護していた夫による傷害致死の事案で、裁判員裁判でしたが、弁護側は、判決までに尋問調書が出来上がっていないことを認めた刑訴法の規定が憲法に違反すると主張しました。



最高裁は、刑訴法が公判調書を整理するとした本来の目的は、期日における手続の公正の担保と上訴された場合に上訴審に資料を提供することにあるとし、弁護人などが調書を参考にして弁論したりするためのものではないという理屈で、弁護人からの主張を退けました。



裁判員裁判では、ほぼ連日期日が開かれ、判決までの期間も短く設定されることから、公判調書の整理が判決宣告後になっても構わないという規定が設けられたことも踏まえているようです。



もっとも、裁判員裁判が行われる前から、あくまでも公判で取り調べられた結果のみが証拠となるのであって、尋問の結果を記載した調書自体に基づいて心証を形成しているわけではないということは当然のこととされていたわけですが、裁判員裁判制度によってなおさら、このような趣旨が推し進められたということがいえそうです。



もっとも、私は裁判員裁判の経験はなく、非裁判員裁判の刑事事件(否認事件)や民事事件では、相も変わらず、尋問後の法廷では、

「調書はいつ頃出来上がりますかね?」

「そうですね、だいたい今から1ヶ月後ですかね」

「じゃあ、それから書面書きますので・・・」

「では、次回期日は2ヶ月後くらいで・・」

というやり取りがされているというのが実情です。





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