判例タイムズ1420号で紹介されている事例です(東京地裁平成26年1月28日判決)。



交通事故で100:0はないとよくいわれますが,追突事故などではない限り,過失相殺がなされるのが普通です。

1000万円の損害が発生したとしても自分の過失割合が10パーセントであれば,加害者からは900万円しか受け取ることができないことになります。

人身傷害保険は,過失割合に関わらず,保険会社の一定基準により算出された保険金を早期に受け取ることができるというものです。



ここで,加害者からの賠償金を受け取るのが先か,人身傷害保険を先に受け取ってから加害者に賠償請求するか,どちらが先行するによって,結論が分かり得るという問題が指摘されています。



この点,人身傷害保険金を先に受領したケース(人身傷害保険先行型)については最高裁の判決があり(平成24年2月20日),受け取った人身傷害保険金はまず自己の過失分に充てられるものとされています。先の例で言えば,人身傷害保険金として900万円を受け取った場合,1000万円の損害のうち,自己の過失部分である10パーセントのところにまず充当されるので,加害者に対しては残りの100万円を請求することができる訳です。人身傷害保険はそういう保険なので当然といえば当然ですね。



先の例で言えば,加害者から900万円を受け取った後に,人身傷害保険金として100万円を請求したということになります。



これに対して,本件では,先に加害者から損害賠償金(加害者からは自己の過失割合相当分は受け取れませんのでその部分は除いた金額ということになります)を受け取り,その後に人身傷害保険を請求したというケースです。



ここで,人身傷害保険の約款には,支払われる保険金額は,加害者から受け取った金額は控除するとされていることが多く,本件においても,約款に従い,算定される人身傷害保険金から加害者からの受取済みの賠償金を差し引くと支払金額は0円となるということで,保険会社が支払を拒否したというものです。



裁判所の判断は,人身傷害保険の目的は自分の過失部分の損害を填補する

ことにあるから,約款を合理的に解釈すべきであるとして,保険会社に対して,人身傷害保険金の支払いを命じました。




本件は控訴されているということです。



人身障害保険金を後から請求するケースについての裁判例は分かれており,現在のところでは,人身傷害保険金を先に受領しておくというのが安全ではないかと思います。




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