判例時報2276号で紹介された事案です(名古屋高裁平成26年11月14日判決)。



裁判所に行くと、外に設置された掲示場があり、かぎ付きのガラスケースの中に所狭しと書類が張り出されていますが、これは公示送達という手続に関する書類で、下記の民事訴訟法の規定に基づいて、裁判所から訴状などを送ろうとしたものの、被告が行方不明などのために届けられないことから、裁判所の掲示場に「書類をいつでも取りに来てください」という内容の張り紙をしておくことで、書類が届いたものと見なすというものです。



民事訴訟法第110条  次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
 第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
 外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
 第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
 前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
 同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。


第111条  公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。


原告の代理人として訴状を作成し裁判所に提出すると、裁判所が郵便局を通じて書類を被告のもとに届けますが、届け先に被告が住んでいなかったりすると、郵便局から送った書類が裁判所に戻ってきます。

そうすると、裁判所の書記官は、原告側に連絡して、被告の所在調査などをするように求めてきます。送達事務は書記官の権限(業務)ということになっているので、書記官の方でてきぱきやってくれるのかと思いきや、全部丸投げされます。




郵便局からの戻ってきた理由が「留置期間経過のため」ということなのか「宛てどころ尋ね当たらず」なのかなどによって対応が代わってきますが,留置期間経過であれば,郵便局としてはその場所に被告がいるという認識をしているということなので,再度の送達や休日夜間の送達を上申したりすることになりますが,それでも受け取らないということになると,住民票の調査のほか,やはり,現地まで調査に行くことになります。

「宛てどころ尋ね当たらず」で帰ってきてしまった場合には,住民票を調べたりすることになります。

また,被告の住んでいるところは分らないが,就業場所(勤め先)が分っているときは,勤め先に宛てて送達することが認められています(民訴法103条2項)。住所に宛てて訴状などが届いているのにほったらかしにしておくと,勤務先が原告側に分っているときはそこに届けられてしまい,恥ずかしいことにもなりかねないので,諦めて受け取った方が吉です。

また、書類が受け取られていたとしても、転送先で受け取っていたり、また受け取った人物が被告本人ではなく同居人であったりするなどした場合にも,被告本人が受け取ることが原則とされていることから,調査を求められます。



なお,被告がどこに住んでいるのか,どこで勤めているのか判明しているものの,被告が受け取らないような場合には,送達すべき場所は分っているので,公示送達ではなく,書留付郵便送達といって,裁判所から被告に宛てて「書類を渡すからいつでも取りに来てください」という内容の書類を送ることで送達が完了したものとみなされることになっています。




本件は,弁護士が依頼人とトラブルになったことから,依頼人を被告として債務不存在確認などの訴えを提起したというものですが,訴状が「宛てどころ尋ね当たらず」で戻ってきたことから,弁護士は,住民票を調べたものの被告の住所は変更はされておらず,また,その住所の現地調査をしたところ,室内の消灯やカーテンの取り外しなどを確認し,部屋のオーナーに尋ねたところ被告は家賃を滞納して行き先を告げないまま転居したという回答を得たことなどを報告書にまとめて裁判所に報告し,被告について送達すべき場所が知れないとして公示送達の申立を行い,書記官もこれを認めて公示送達を行い,被告欠席のまま弁護士の勝訴判決が出されました。



しかし,その後,強制執行のための書類が,今度は転送されて被告の新住所に送達されたことから,被告は初めて自分の敗訴判決が出ていることを知り,欠席したままなされた敗訴判決に対して控訴したというのが本件です。




高裁では,それまでのいきさつから,弁護士は,被告が使用していた電話番号を知っており電話をかけて住所を聞くこともできたはずであること,また,被告に宛てて出した暑中見舞いが転送されて被告の新住居に届いていたであろうことを知っていたことなどが指摘され,送達すべき場所の調査として不十分であり,また,弁護士が書記官に提出した書類の中には被告の電話番号を記載した書面が含まれていたことから書記官としては電話番号を手掛かりに住所の調査を行わせたりすることも出来たはずであるとして,公示送達の要件を満たさないと判断されました。




公示送達が無効ということになると,そもそも,一審の訴状が被告に届いていない状態となるので,初めからやり直しということで,一審に差戻しということになりました。



送達に関する調査は面倒くさいので手抜きしたくもなるのですが,しっかりやっておかないと結局後から判決の効力を否定されたりすることになるので,我慢してしっかりと調べておかないといけないということになります。



【関連記事】

書類の送達

http://ameblo.jp/egidaisuke/entry-11128151114.html





■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。