判例時報2272号で紹介された事例です(札幌高裁平成26年7月2日決定)。



本件は,高齢の母親が子に対して扶養料の支払を求めたというものです。

もっとも,事案としては少し特殊で,子は医師であり,経営する医療法人から月額300万円程度の報酬を受け取っており,母親も,その子と関係が良好であった時期は当該医療法人の理事として,月額30万円程度の理事報酬を受け取っていたり,ベンツを所有するなどしていましたが,母と子の関係が悪化して,理事報酬は任期満了により打ち切りとなり,その際,母は子に対して退職や退職金の支給をめぐって紛争となったとのことです。




その後,母は町営住宅への入居や生活保護の申請をしたり(生活保護申請は却下),生活の変転があり,その過程で,子に対して月額40万円の扶養料の支払いを求めて,家庭裁判所に調停(審判)を申し立てたというものです。




親族間の扶養に関しては下記の通り民法に規定があります。



民法第877条  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
  前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

第879条  扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。


親と未成熟子や夫婦間の扶養義務に関しては,生活保持義務といって,自分の生活に余裕があろうとなかろうと,決められた一定の金額の扶養料を支払わなければならないというルールとなっていますが,直系血族であっても高齢の親に対する扶養や兄弟姉妹等の一般親族とされる間の扶養関係については,生活扶助義務といって,扶養義務者が自分の社会的地位や収入等からみて相応の生活をしたうえでの余力をもってなされれば足りるものとされています。



このような違いがあるので,前者の場合には,父母や夫婦のそれぞれの収入を照らし合わせて一定の金額が弾き出されるという標準算定方式と呼ばれる算定の仕方で扶養の金額を算出するのが実務です。実際に余裕があるなしは関係なく,収入の中から,無理をしてでも支払わなければならない分があるだろうという考え方です。




これに対して,老親に対する扶養など生活扶助義務については,扶養権利者(老親など)が実際に必要となる金額を算出し,年金など自らの収入でまかないきれない分を算定し(不足生活費),さらに,扶養義務者(子どもなど)が余力のある範囲内で負担するという思考方法になります。




不足生活費をどう算定するかという点については,生活保護基準(生活保護を受けたとしたら,いくらの生活費が必要として算定されるか)などで算定するのが一般的とされていますが,本件においては,総務省統計局の家計調査報告に基づく消費支出に依拠して算定しているという点に特徴があり,これでいくと,生活保護基準よりは高くなるようです。

これは,医師である子の収入が比較的高いということも影響していたのではないかと思われるところです。




本件においては,母親の必要最低生活費を月額18万円余としたうえで,受け取れる年金を差し引いた月額11万円を不足額とみて,子に対してその支払いを命じました。

子は月額300万円の収入があり,そのうち教育費や住宅ローンなど190万円の支出があるとされていますので,余力としてはもっとあるのでしょうが,そこが,未成熟子に対する扶養と高齢親に対する扶養との違いということになります。






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