判例時報2269号等で紹介された事例です(水戸地裁平成27年2月17日判決)。




遺言によって,相続(「相続させる遺言」といいます。)や遺贈を受けることになっている相続人や受遺者が遺言者よりも先に死亡した場合,死亡した相続人や受遺者の相続人が代わって相続や遺贈を受けることが出来るのかという問題があります(そのような事態となったのであれば,遺言者としては遺言を書き替えればよいわけですが,遺言者がすでに判断能力がなくなっていたりするなど,元の遺言がそのままとなっていたという場合に問題となります。)。



「相続させる遺言」と遺贈の違いというのも分かったようで分らないところもあるのですが,遺言に「相続させる」と書いてあるか「遺贈する」と書いてあるかで違ってくるというふうにイメージしておけばよろしいのではないかと思います。





遺贈については民法994条に規定があり,当該部分については遺言は効力を失う者とされ,遺言者に先立って死亡した受遺者の相続人は受遺者が受け取る筈だった遺産について権利を主張することはできません。


民法第994条  遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。



遺言者としては,遺贈しようとした人との関係などに鑑みて遺贈したのであり,その人の相続人たちにまで遺贈しようとは思っていないのが通常であろうということを根拠としています。




「相続させる遺言」については最高裁の平成23年2月22日判決が出されており,遺贈と同様に,その部分(先立って死亡した者に相続させること)については原則として効力を生じないこととされました。




本件は死因贈与契約が問題となった事案です。死因贈与契約というのは,遺言ではなく,贈与者の死亡を条件として遺産を贈与させるという内容の契約を当事者が事前にしておくというもので,遺言という遺言者の一方的な意思表示によってなされるものではなく,あくまでも当事者間の合意による契約であるということがポイントです。



本件では,母親と3人の子どもたちが「遺言の事」という題名の書面を取り交わし,それぞれの子どもに不動産や預金などを譲るという内容となっていました。

その後,不動産を譲るとされた子どもの一人が母親の死亡の3日前に亡くなってしまいました。



そもそもこの書面の法的性質自体が争われましたが,本件では死因贈与契約であると判断されています。



死因贈与契約については民法554条により性質に反しない限り遺贈の規定が準用されるとされていますので,先ほどの民法994条が準用されるとすれば,母親に先立って死亡した子の相続人(本件では配偶者と子2人)は,母親が譲るものとした不動産に対する権利がないということになりますが,準用なしとすれば,逆の結論となります。



この点については,準用肯定説と否定説があり,最高裁の判断はまだありません。




本件においては,準用されないと判断されており,母親に先立って死亡した子の相続人たちの勝訴となりました。




死因贈与契約と遺贈とは実質的には同じような機能を持っているものといえますが,死因贈与契約あくまでも契約であるということを重視すれば,当事者間で拘束力があることになるので,準用されないという結論に傾きやすいことになるのかなと思います。



本件は確定しているということです。




遺言にせよ死因贈与契約にせよ,仮に,仮に遺言者や贈与者より先に受遺者や受贈者が死亡した場合のことについてもきちんと書きこんでおくのがよいと思います。




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