判例タイムズ1416号で紹介された事例です(東京地裁平成25年7月1日は判決)。



本件は、司法書士と相談者との間のトラブルについての裁判例ですが、弁護士であっても同様なことはいくらでも起こり得るものです。



案件の内容としては・・・

・平成21年9月、被相続人が死亡し相続が発生し、相続人はその妻と被相続人の兄弟姉妹(本件司法書士の相談者)でしたが、妻はすぐに相続放棄を行った。

・相談者は、被相続人の死亡2ヶ月後には妻から相続放棄したことを、また、平成22年9月中旬には一周忌法要の場で、妻から、債務超過で相続放棄したということを聞いていた(←この時点で、3か月以内に相続放棄していれば何も問題はなかった・・・)。

・被相続人の死亡から1年以上経過した平成22年11月、被相続人が借りていた土地の賃料や更新料が未払いとなっていることについて、土地の所有者から相談者に話しがありました。

・土地の所有者と被相続人の妻、相談者が面談することになり、本件司法書士は、土地の所有者から、相談者が相続放棄を希望した場合のために、法律相談の顧問として、面談に立ち会うように求められ、面談に立ち会った

・平成22年12月初旬、面談に際し、相談者は、土地所有者や被相続人の妻から、債務超過であることから相続放棄するように勧められ、相談者は、相続放棄することを希望した。

・司法書士は、相談者に対して、被相続人の死亡から1年以上経過しているので、相続放棄の起算点を債務超過を知った時点とすることで対応すべき年、そのための確認資料を持ってきてくれれば書類は作成できるという説明をした。

・その後、司法書士は除籍謄本などの書類を準備することとし、相談者からの連絡を待つことにした。

・その間、その間、土地の所有者は、相談者(相続により被相続人名義の建物の所有者となった)に対し建物収去、土地明渡の訴訟提起をし、相談者は司法書士に相談したところ、司法書士は「相続放棄するなら無視すればよい」というアドバイスをした。また、被相続人の名義の建物の賃借人が、「土地の地代を支払わないので建物が収去されるのであれば、建物の賃貸人としての義務に反しており損害賠償請求する」といった内容で相談者に対して内容証明郵便を送ってきたことなどしたことから、司法書士と相談者との間で対応協議するなどした。

・結局、平成23年10月中頃になって、相談者から「最初から相談放棄するつもりだったのに」というクレームを受けつつ、一方でその段階になって費用を聞かれて10万円超と答えると、相談者は「必要経費だからしょうがない」と答えた。



上記のような事情のもとで、相談者は、結局、相続放棄手続をすることができず、被相続人の債務を相続する羽目になったのは司法書士が受任した相続放棄の手続をしたかった、又は、受任するそぶりを見せながら結局受任に至らず相続放棄する機会を奪ったからだという理由で、司法書士に対して損害賠償請求したというものです。



裁判所は、司法書士との間で契約書が取り交わされていないことや相続放棄の手続に当たって必要となる書類が出されていないことなどから、そもそも、本件において、司法書士は相続放棄の手続について委任を受けたとは言えないと判断されています。

司法書士が勝手に相談者の名前で相続放棄のための申請書類を作成提出することはできないことは相談者にとって認識できないことではないし、司法書士が代理するとしても委任状も司法書士に提出されていない以上、司法書士に委任したとはいえないとされています。



また、司法書士が相続放棄の手続を受任するそぶりを見せながら受任しなかったという点についても、そもそも、司法書士は相談者の名前で書類を作成して裁判所に提出するということは許されていないのであるからそのような信頼は法的保護に値しないとされています。




ということで今回の結論 

・(相談者の方へ)相続放棄するなら早く手続しましょう

・(専門職の方へ)相談を受けているうちに何の相談を受けていて、何を依頼されているのか分からなくなってしまわないように、その都度、きちんと確認しておきましょう。






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