判例時報2266号で紹介された事例です(さいたま家裁平成26年6月30日審判)。



民法では,仏壇や墓地などの祭祀に関する権利については,財産権の相続とは別に考えることとし,被相続人の指定があればそれに従い,指定がない場合には慣習に従って祭祀承継者を定めることとしています。

当事者間で決められない場合には,家庭裁判所が被相続人の指定や慣習を考慮して,定めることとなります。



民法第897条  系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。



本件は,昭和54年に亡くなった夫のために墓地の永代供養料を支払って墓地,墓石や仏壇を購入し,夫の菩提を弔っていた母親が亡くなり,その長男と次男との間で祭祀承継者をめぐって争われたという事案です。



もともと,被相続人である母親は二男と長く同居して暮らしていましたが,自宅の建替えの際に工事の一時的な間だけということで母親を長男のもとに預けました。

その後,二男が母親を迎えに行ったところ,長男が母親の引渡しを拒否し,以降,母親は長男のところで暮らしますが,母親が死亡するまでのその期間は2年程度度あったということです。



長男は,母親が亡くなったことを二男や親族には知らせず,霊園に対して永代使用承諾届の紛失届出を行って霊園の使用者を長男に変更し,母親を密葬して仏壇を購入して位牌を安置したということです。




二男からの祭祀承継者指定の申立を受けて裁判所は,被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係,被相続人の意思,祭祀承継の意思及び能力その他一切の事情を斟酌して決定するという基準を提示したうえで,本件においては,

・もともと母親は長く二男と生活しており,母親としても二男を祭祀承継者と考えていたと思われること

・母親が長男のもとで暮らすようになった経緯,長男が母親と暮らしたのは短期間に留まること

・長男が母親の死亡を知らせなかったことは祭祀承継者としてふさわしい行為ではなかったこと

などから,本件の祭祀承継者を二男と定めることとしました。




本件は確定しているということです。




今後ですが,霊園との関係では,本件審判をもとに霊園使用者を二男に変更するよう求めていくということになるでしょう。



遺骨や遺灰がお墓の中に納められていればそれでよいのですが(普通はそうでしょうが),そうではなく長男側がまだ保管していたという場合には,その引渡しということが問題となります。




めったにお目にかかる申立ではありませんが,私も一回だけ遺骨引き渡しの調停申し立てというのをやったことがありましたが,裁判官から「遺骨引き渡しの調停なんて,ずいぶん前に一回やったことがあるだけだなあ」と言われて印象的だったことがあります。





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