金融・商事判例1475号で紹介された事例です(東京高裁平成27年7月16日判決)。



高齢で窓口まで手続に行けないなどの理由で、子どもなどの親族が代理して本人名義の預金を引き出そうとした場合にどのように対応すべきかというのは金融機関としても頭の痛いところです。



本当にそれが本人の真意に基づく払い戻し請求であれば良いのですが、代理人を名乗る親族が本人名義の預金通帳や届出印を盗んでいるという場合もあり得るからです。




本件では、70歳代の父親の娘が、8月15日、父親名義の預金通帳と届出印、キャッシュカードを持って、父親が口座を開設していない大手都銀の支店に来店し、父親は出張のため来店できず、「3月に火災にあった自宅の建築資金として必要」という理由で、別の支店にあった口座のほぼ全額2082万円の払い戻し請求を行い、銀行担当者は、届出印の照合とキャッシュカードの暗証番号を娘から確認した上で、それらが合致していたことから、特に、預金名義人である父親に確認することなく、現金で請求のあった全額を払い戻してしまったというものです。



なお、前日の8月14日に、娘は、キャッシュカードを使って、引きだし金額を小出しに分けた上で限度額の50万円まで引きだし、当日の15日にも同様に限度額50万円まで引き出していました。




一審の東京地裁の判決では、このような子―キャッシュカードによる引き出し、また、請負金額の支払いのために現金で2082万円もの現金での払い戻しをするというのは不自然であり、いくら届出印と合致し、娘がキャッシュカードの暗証番号を答えられたからと言っても、その払戻権限に疑いを抱くべきであったとして、預金名義人、すなわち父親による2982万円の請求をすべて認めました。

銀行としては娘に払い戻した上に、さらに父親に対しても二重払いさせられたということになります。




銀行側が控訴したところ、一審段階では行方知れずとなっていた娘が見つかり、控訴審において、父親から支持されてひきだしたという証言をしたところ、

高裁おいては、父親による払い戻しに対する承諾があったものと認定され、銀行側の逆転勝訴となりました。

高裁では、銀行約款に基づく届出印の合致又はキャッシュカードの暗証番号の合致による銀行の免責という点が重要視されるとともに、キャッシュカードによる小分けにした引きだし行為は、仮に娘による不正引き出しの意図があったのだとすれば、一気に限度額一杯まで引き出すはずだという評価判断がされています。




本件は上告受理等の申立てがされているということです。




銀行にとっては預金者が預金を引き出す理由は様々なので、理由の内容についてまで詮索することは無理だとは思いますが、キャッシュカードの暗証番号まで合致していたというのが大きかったのではないかなという気もします。

とはいえ、本人が来店しているわけでもないのに、窓口で親子と確認しただけで親子関係を認めた上に、約2000万円もの現金引き出しに応じるというのは、普段、融通の利かない銀行の対応に苦労ばかりさせられている弁護士としては、銀行もいささか注意が足りなかったのではないかとも思われます。




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