一部報道などもされた件です(判例時報2260号 熊本地裁平成27年3月27日判決)。



本件は、平成19年に婚姻し、その直後から、夫から妻に対する暴力があり(ただ、暴力の時期や内容については客観的な証拠がなく具体的には認定できないとされています。また、妻から夫に対するメールの内容などから、妻が一方的に夫に対し恐怖心を抱いていたわけではないということも認定されています。)、一時別居したものの、その後、夫が暴力をしないことを約束したことから再び同居し、長男と二男をそれぞれ設けた夫婦の案件です。




しかし、その後、夫の言動に不満を募らせた妻が二男を連れて再び別居が開始され、妻から夫に対し離婚調停が申し立てられました。この調停手続き期間中、5回の面会交流が実施され、妻が片道4時間かけて自動車で二男を連れて夫に会わせていたということです。




調停においては、当分の間別居するというよくありがちな玉虫色の内容で調停が成立し、また、夫が長男、妻が二男を監護することとされ、それぞれ月2回程度(原則として第二、第四土曜日)の面会交流をすること、その具体的日時や場所は子の福祉に配慮して当事者間で事前に協議して決めるという、これまたよくありがちな玉虫色合意となりました。




調停成立後は二男について2回の面会交流が実施されましたが、1回目の面会交流において、同行していた妻の父親が長男に対し「守ってやれなくてごめんな」という不用意な一言を発したりしたため夫が妻に対して講義するということがありました。




その後、夫から妻に対して、前記の妻の父親の発言について謝罪する動画を添付して送信するようにといった要求がなされ、妻はこれを拒否するとともに、

面会交流を拒否し、また、代理人弁護士を選任した上で、2回目の離婚調停を申立てました。




代理人弁護士は夫に対して、面会交流の方法について話し合いたい旨をメール送信し、夫は妻の体調が悪いのなら場所については譲歩するという内容のメールを返信しました。

その後も面会交流が実施されなかったため、夫から家裁に対し履行勧告の申立てがなされ、家裁から妻に対し勧告がされたものの、妻側からは特に反応がなかったということです。




さらに夫から代理人弁護士に対し面会交流を求める内容のメールが送信され、代理人弁護士は条件として場所についての条件及び夫と妻が直接顔を会わせないように弁護士事務所で子の引き渡しをする条件を提案しました。

これに対し、夫は、この条件について答えることはなく、面会交流ができていないことについて弁護士が関与しているのかを問うメールが送信されました。

代理人弁護士は、夫とのやり取りについて、以降はメールでのやり取りはせず、書面でのやり取りに限定することとし、以降は専ら書面郵送でのやり取りのみを行い連絡するようになったということです。




そして、代理人弁護士は、書面により面会交流の提案をしたものの、夫からは、書面郵送の方法を用いることや場所を弁護士事務所とすることの合理性を問い質す内容のメールが送信され、代理人弁護士からは「違憲の対立が見られたため、争点を明確にし、適格に解決すべく」書面郵送の方法を用いることとしたというやり取りの応酬が続きました。




このような経緯の中で、夫から妻及び代理人弁護士に対し、面会交流をさせなかったことについて不法行為が成立するとして損害賠償請求が提起されたというのが本件になります。




裁判所の判決では、1回目の調停において取り決められた面会交流の実施に関し、当事者には誠実に交渉すべき誠実交渉義務があるとした上で、正当な理由なく一切の協議を拒否した場合や、相手方が到底履行できないような条件を提示したり、協議の申し入れに対する回答を著しく遅延するなどして社会通念に照らして事実上協議を拒否したと評価される行為をした場合には面会交流権を侵害したものとして不法行為を構成するとした上で、本件について、メールによる連絡が可能であり、実際に途中まではメールによるやり取りがされていたことから、あえて時間のかかる書面郵送によるやり取りをすることに合理的な理由がないことや妻と代理人弁護士が家裁からの履行勧告に応対している形跡がないこと、途中からは書面での協議すら行った形跡がないことといった事情を考慮すると、夫が必要以上の説明を求めていることや弁護士には一定の裁量が認められるとしても、意図的な遅延行為であったと評価できるとして妻と代理人弁護士に対し慰謝料20万円の支払いを命じるということになっています。





判例時報の解説によると、本件以前に面会交流の拒否を理由として損害賠償責任を認めたものとしては3例あるようですが、面接交流については強度の違法性がない限り軽々に違法性を認めるべきではないといった見解も併せ紹介しています。




面会交流の実施には、当事者の感情も絡んでさまざまにデリケートな問題があり、一度もつれると、当事者の信頼関係が崩れ、にっちもさっちもゆかなくなることは多くあることです。




当事者同士又は弁護士といってもあくまでも一方当事者の代理人である立場の人間に面接交流の実施について交渉して決めていくということを過度に求められても困るというのが率直なところであり、面接交流が子どもにとって大切なことであるということなのであれば、きちんと公的な制度として面接交流を円滑に実施できるような体制を整えていくべきなのではないかと思います。



本件は控訴されているということです。




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