判例時報2260号で紹介された事例です(福岡高裁平成27年2月12日)。



本件は,親族後見人が身上監護,専門職後見人である弁護士がそれ以外(財産管理)という事務の分掌がされていた件で,専門職後見人が,被後見人名義の預金口座がある信用金庫に対して,普通預金と定期預金の口座解約と預金の払い戻しを求めたところ,信金側では,約款に「預金の解約や払戻しには通帳を提出して届出の印鑑により押印した請求書を提出すること」という規定があることを理由に口座の解約や払戻しに応じなかったとため,専門職後見人が信金を相手方として預金の払い戻しと遅延損害金の請求をしたという事案です。



一審は,預金の払戻は認容したものの,払戻しの拒否については,約款に基づく対応として正当な理由があったとして遅延損害金についてまでは認めませんでした。



本件では,親族の一人が被後見人名義の預金通帳や印鑑を後見人に引き渡さなかったため,後見人は,通帳や印鑑の提示が出来なかったという経緯でした。また,(おそらく,後見人から家裁に何とかしてくれと連絡が入ったものと思われます),後見人を選任した家裁(熊本家裁天草支部)から,当該信金に対しては,「財産管理権は専門職後見人に専属していること,親族が通帳等の引き渡しを拒否しているという事情,払戻しに応じてもらえないと被後見人の治療費などがねん出できず被後見人を危険な状態に陥らせる可能性もある」旨の書面により連絡もされていました。すごく親切な家裁ですね,ここまでフォローしてくれると後見人も助かります。



しかし,信金は,約款を盾にして頑なに払戻し拒否を続けました。常軌を逸している対応です。




高裁では,払い戻し拒否に正当の理由はなかったとして,専門職後見人が払戻しを求めた時点からの遅延損害金の請求も認めました。



理由として,約款に前記のような記載があったとしても,預金通帳というのは有価証券ではなく,通帳を所持,提示しなくても,他の方法で真の預金者からの払戻請求であると確認できれば,応じなければならず,約款の趣旨は,真の預金者であるかについて簡易に確認し,窓口業務を大量,円滑,安全に進めるためのものに過ぎないというものです。




後見実務では,被後見人名義の通帳や届出印鑑が見当たらないということはよくあることですし,本件のように親族が引渡しに応じないということもよくあることです。

その場合,通帳等については紛失ということで手続きが進められることがほとんどであり,私自身も,窓口で若干揉めたことはあっても全てのケースで,預金の手続が出来ています。




本件は確定しているということです。





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