判例タイムズ1414号で紹介された事例です(東京地裁平成25年9月6日判決・東京高裁平成26年4月24日判決)。




本件の経緯は,M物産に勤務していた社員が早期退職制度を利用して退職し,同制度に基づいて,平成23年2月から10年間毎年2月に「つなぎ年金」として金銭給付を受け取るということになっていたところ(結構いい金額で,受領済みの金額を見ると年約700万円程度のようです),平成22年6月に,破産手続が開始され,破産管財人が選任されたというものです。




破産管財人は,上記のつなぎ年金の全額を破産財団を構成するものとして,M物産から受け取りました。受け取った金額は平成23年2月に約696万円,平成24年2月に約709万円,平成25年2月に約741万円となっています。



ところで,破産者は,平成23年9月に妻と離婚し,その際,財産分与として,破産者がM物産から受け取る繋ぎ年金の半分を受け取るものとして合意しました。



元妻としては,このまま破産管財人につなぎ年金を全部持っていかれてはたまらないということで,つなぎ年金は,民事執行法152条1項2号に規定されている「退職年金又はその性質を有する債権」に当たるから,その4分の3相当額は破産法34条3項2号により破産財団を構成しないものだとして,離婚成立以降受け取り済みの金額の4分の3相当額の返還請求などを求めました。




破産法第34条3項2号
 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。

民事執行法第152条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権



一審二審ともに,妻側の請求は認めず,破産管財人が勝訴しましたが,高裁において,理由の一つとして,本件つなぎ年金は,賃金のような労務の対価というものではなく(それらについては退職金などとして評価,支給されている),早期退職に応じた者に対する特別の利益であると指摘されています。




一審の判決文で指摘されていますが,平成23年6月の離婚当時には,既に夫は破産しており,前年支給されたつなぎ年金については破産管財人が支払を受けていたわけですが,夫婦としては,まさか,破産事件がこれほど長く続くとは思わず,その後も,何年にもわたってつなぎ年金が破産管財人に支払われるということは考え難いとして,いずれは,破産管財人が放棄して破産手続を終わらせるのではないかということを期待して,つなぎ年金についての財産分与の合意をしたようですが,そうすると,元妻が持っているのはいわば「期待権」というような性質のものなので,訴訟により実現できる請求権とまではいえないということも指摘されています(一審判決)。




破産手続は,スピーディーに終結させるというのが一つの基準的な考え方ではありますが,本件つなぎ年金の支払額があまりに多額であり,受け取った金額によって配当することができるということも考えると,平成22年の破産事件が現在まで続いているのものと思われます。





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