判例時報2259号で紹介された事例です(福岡高裁平成27年2月16日決定)。


相続放棄の手続は,自分のために相続開始があったことを知ってから3か月以内とされていますが(民法915条1項),3か月以内の起算時期について,相続財産が全くないと信じることについて相当の理由がある場合には,相続財産の存在を認識したときから起算するというのが判例であり,実際の実務ではある程度緩やかに解釈され,相続放棄が認められています。




本件では,昭和63年に相続が発生し,家庭裁判所に対し相続放棄の申述手続きをしたのが平成26年という事案です。




なぜこんなに手続が遅れたのかと言えば,よくあるように,本件相続に際しては,被相続人の妻が事業を承継することとし,そのために,自宅や店舗不動産をすべて被相続人の妻が相続するものとされ,他の相続人である子たち(結婚して外に出ていた長女や大学進学以来実家を離れていた四男など)もそれを了解し,特に,正式に遺産分割協議がされたということもありませんでした。




実際には,被相続人には債務があり(と言っても,被相続人自身が借りていたものではなく),県が蒲鉾の組合に対して約1億8000万円を貸し付けていた貸付債務の連帯保証をしていたところ,同組合が平成25年に破産したため(それまではきちんと返済していたことから,連帯保証人側に対して通知がされることもなかった),債権者である県から,連帯保証人であった被相続人の法定相続人らに対して,貸付金の残債務についての通知(残債元金約5077万円)があり,相続人ら(事業を継承した被相続人の妻と事業を手伝っていた長男はすでに死亡しており,残された事業には全く関与していなかった子どもたち)は初めて債務の存在を知り,相続放棄の手続きをしたという経緯です。




家裁では,相続放棄の申述は却下されましたが,高裁では,被相続人には本件連帯保証債務以外の債務はなく,借り受けたのも被相続人が代表者を務めるような法人ではなく,他の事業者が結成したと思われる組合であったということや相続人と被相続人の交流状況(時々行き来する程度)などから,本件相続人らが被相続人から相続すべき財産は全くなく,債務の存在も認識できたとはいえないとし,債権者である県からの通知が来た時から起算して相続放棄の手続期限の要件は満たしているとして,相続放棄を認めました。



本件は確定しているということです。






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