http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150730/k10010172421000.html


外回りの営業職のため労働時間を正確に把握できないとして固定給にされ、残業代を支払われなかったのは不当だとして、大手住宅メーカーの元社員らが未払いの残業代180万円余りの支払いを求めて東京地方裁判所に労働審判を申し立てました。
2人はおととし入社した直後から外回りの営業担当となりましたが、上司が労働時間を正確に把握できないとして、一定の時間働いたとみなす「事業場外みなし」という制度を適用されたということです。この制度では、給料は原則、固定給となり、月に最大80時間近くの残業をしていたのに毎月23万円しか支払われなかったということです。
そのうえで、2人は、上司は携帯電話やタブレット端末で労働時間を把握できたはずで、固定給にされたのは不当だとして、未払いの残業代、合わせて185万円の支払いなどを求めています
(7月30日付配信のNHKニュースウェブから一部用)。


時間外の割増賃金(残業代)は,使用者が労働時間を把握していることが前提となりますが,「労働時間を算定し難いとき」には,一定時間働いたとみなすという制度があります(労基法38条の2)。



労働基準法第38条の  労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。



この規定の適用が問題となった最近の有名の最高裁判例として,募集型の企画旅行における添乗員の業務について,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされたものがあります(平成26年1月24日判決)。




これは,ツアー添乗員の事案でしたが,ツアーの日程表には,発着地,交通機関,スケジュール等の欄があり,ツアー中の各日について,最初の出発地,最終の到着地,観光地等(観光施設を含む。以下同じ。)の目的地,その間の運送機関及びそれらに係る出発時刻,到着時刻,所要時間等が記載されていたこと,添乗員に対し,国際電話用の携帯電話を貸与し,常にその電源を入れておくものとした上,添乗日報を作成し提出することも指示している。添乗日報には,ツアー中の各日について,行程に沿って最初の出発地,運送機関の発着地,観光地等の目的地,最終の到着地及びそれらに係る出発時刻,到着時刻等を正確かつ詳細に記載し,各施設の状況や食事の内容等も記載するものとされていたこと,ツアーの催行時において,ツアー参加者の了承なく,パンフレットや最終日程表等に記載された旅行開始日や旅行終了日,観光地等の目的地,運送機関,宿泊施設等を変更することは,原則として,本件会社とツアー参加者との間の契約に係る旅行業約款に定められた旅程保証に反することとなり,本件会社からツアー参加者への変更補償金の支払が必要になるものとされている。そのため,添乗員は,そのような変更が生じないように旅程の管理をすることが義務付けられていたことなどから,添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られているものということができるとされ,使用者が勤務状況を把握することが困難であったとはいえず,労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされました。




その日の営業の予定などを事前に把握して報告書を提出させるということはできると思いますし,現在のように携帯電話やタブレット端末などが発達している状況において,外回りの営業職だからといって使用者が勤務時間を把握できないということもいえないことも多いのではないかと思いますが,旅客などと行動を共にする旅行のように日程が時間まで決まっている案件と単独で行動する外回りの営業では違う面もあるなど,記事にある件についても,上記の判例で示された基準などをめぐって議論が展開されるものと思われます。






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