判例時報2257号等で紹介された事例です(東京高裁平成27年2月2月9日)。



民事訴訟に要した費用のうち,訴状提出時の印紙代など,法律(民事訴訟費用等に関する法律)が定める所定のものについては,敗訴者負担となります(民訴法61条)。




訴訟費用を相手方(敗訴者)に負担させる手続きとしては,判決が確定した後,裁判所の書記官(裁判官ではありません)に対し,訴訟費用額の確定を求め,第一次的には,書記官が訴訟費用を算定する処分を行い,処分が確定すると,強制執行が可能な債務名義となります(民事執行法22条4号の2)。




民事訴訟法
第71条  訴訟費用の負担の額は、その負担の裁判が執行力を生じた後に、申立てにより、第一審裁判所の裁判所書記官が定める。
 前項の場合において、当事者双方が訴訟費用を負担するときは、最高裁判所規則で定める場合を除き、各当事者の負担すべき費用は、その対当額について相殺があったものとみなす。
 第一項の申立てに関する処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
 前項の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
 前項の異議の申立ては、執行停止の効力を有する。
 裁判所は、第一項の規定による額を定める処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、訴訟費用の負担の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。
 第四項の異議の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。


勝訴したとしても,訴訟費用の算定までは求めないことも多いのですが,裁判所に貼って出した印紙代が多額であったりすると,その負担まで求めるために,訴訟費用の算定まで求めることになります。




本件は労働者が賞与の支払い等を求める労働事件でしたが,労働者の敗訴が確定してしまいました。



証人の出頭を求めた場合の旅費も訴訟費用の対象となるところ,本件訴訟手続において,それぞれドイツとポーランドに在住していた証人を東京地裁に来てもらうために支出された往復の旅費(航空運賃)について,被告(会社)側が,訴訟費用の算定を求めたところ,書記官が,ビジネスクラス料金によって算定し,合計175万円余となったことから,ビジネスクラス料金で算定することの是非が問題となり,労働者側が地裁に異議を申し立てたが棄却され,さらに,高裁に即時抗告がされました。



民事訴訟費用等に関する法律
第21条  旅費は、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の四種とし、鉄道賃は鉄道の便のある区間の陸路旅行に、船賃は船舶の便のある区間の水路旅行に、路程賃は鉄道の便のない区間の陸路旅行又は船舶の便のない区間の水路旅行に、航空賃は航空機を利用すべき特別の事由がある場合における航空旅行について支給する。
  鉄道賃及び船賃は旅行区間の路程に応ずる旅客運賃(はしけ賃及びさん橋賃を含むものとし、運賃に等級を設ける線路又は船舶による旅行の場合には、運賃の等級を三階級に区分するものについては中級以下で裁判所が相当と認める等級の、運賃の等級を二階級に区分するものについては裁判所が相当と認める等級の運賃)、急行料金(特別急行列車を運行する線路のある区間の旅行で片道百キロメートル以上のものには特別急行料金、普通急行列車又は準急行列車を運行する線路のある区間の旅行で片道五十キロメートル以上のものには普通急行料金又は準急行料金)並びに裁判所が支給を相当と認める特別車両料金及び特別船室料金並びに座席指定料金(座席指定料金を徴する普通急行列車を運行する線路のある区間の旅行で片道百キロメートル以上のもの又は座席指定料金を徴する船舶を運行する航路のある区間の旅行の場合の座席指定料金に限る。)によつて、路程賃は最高裁判所が定める額の範囲内において裁判所が定める額によつて、航空賃は現に支払つた旅客運賃によつて、それぞれ算定する。

第24条  本邦と外国との間の旅行に係る旅費、日当及び宿泊料の額については、前三条に規定する基準を参酌して、裁判所が相当と認めるところによる。



この点に関する民事訴訟費用等に関する法律の規定では,国内の移動に関する基準である「現に支払つた旅客運賃」を参酌して裁判所が相当と認めるところによるとされているところ,裁判所は,証人の地位や役職といった社会的評価に幅のある事由のみによってその判断が左右されることは相当ではないが,事柄の性質上,それらも考慮要素の一つとはなるとし,本件において,証人の社内での地位を考慮しなかったとしても,航空機での移動による負担と軽減を考えれば,ビジネスクラスの利用がふさわしくないとはいえないし,証人らの社内での地位はその利用の相当性判断に当たって積極方向に働くものとされ,ビジネスクラス料金で訴訟費用を算定した判断に誤りはないとされました。ビジネスクラスとエコノミークラスでは,単なる移動のための運賃ということではなく,食事のサービス等に違いが料金に反映されているとしても判断は異ならないとされています。




本件は特別抗告がされているということです。




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