判例タイムズ1412号で紹介された事例です(福岡家裁平成26年3月14日審判)。



本件は,母親の実家で暮らす小学校入学を控えた長女と長男(4歳)の2人の子どもについて,別居している父親を監護者と指定し,父親に対する引き渡しを命じた審判例です。



同居していた時期には,子どもの世話は主に母親が行っていたが,母親は,子どもを連れて自分の実家に戻り別居が開始されました。

母親は,精神状態が不安定だったようで,妄想がひどく対話性幻聴の症状もあり意味不明な独り言をしたり,対話相手に対して激しく怒り罵声を浴びせるなどの攻撃的対応をとることがあるものの,病識はないという状態だったようで,父親から離婚を求めて調停等が提起されたものの,調停に出席した母親は前記したような精神状態となり,調停で協議できる状態ではなく,調停は不調で打ち切られ,父親は,離婚は棚上げしたまま,子の監護者指定と引渡しを求めました。




家庭裁判所調査官の家庭訪問などの調査の結果,

・母親は,子どもたちを自ら監護することはなく,日中は自室に閉じこもったまま,実家の家族に世話をゆだねている

・食事は,母親の弟妹や祖母が用意することもあるものの,場合によっては子どもたち自身が用意することもある状態である

・長女(6歳)は起床が遅く午前10時,11時に起きることが多く,正午になることもある

・就寝時間も深夜0時を回ることもある

・調査官が訪問した際も,午前10時15分時点で,子どもたちは起床しておらず,起床後も着替えをした様子はなく,長女が菓子を食べ始めてもこれを注意する者もなく,朝食の準備がされる様子もない。長男も食事をせずにチョコレートを食べている。

・子どもたちは,保育園にも通っておらず,かといって,家の中で母親が子供たちと一緒に遊ぶということもない

・子どもたちは室内でテレビを見たりゲームをしたりして過ごしている。

・母親は長女の小学校入学の準備をしておらず,入学のための手続もしていない。母親の家族が手続を促したところ,激怒するなどの対応を取られたため,替わって手続を行うこともできていない。長女は,ランドセルについての希望を述べるなど,入学を楽しみにしている様子がうかがえる。

・調査官が長女に対し「お父さんと住むことになったらどうかな」と質問したところ「いいよ」と答えたが,「このままママと住むことになったらどうかな」といったところ返事がなかった。

・長女は,母親について「怒っている」と表現し,母親に対してスキンシップを求める様子もなかった

といった状況が明らかになりました。




一方,父親の状況としては,営業職の父親は月額23万円程度の収入があるほか,子どもたちを引き取ることとなった際には勤務シフトを変更して早く帰宅できるように勤務先とも話を付けており,泊まり付の出張も別の担当者が決まっている,父親は,別居後も保育料を支払った折り,いつでも保育園を再開できる態勢を整えていること,長女の小学校入学の手続を済ませている,子どもたちが病気の際には休暇を取ったり自分の親に来てもらうなどの予定も経てているなどの状況でした。




このようの父母のそれぞれの状況を考え合わせると,父親の監護意欲,監護体制の方が勝っていることが明らかであることから,父親を監護者としたうえで,子どもたちを父親に引き渡すとの内容の審判が下されました。




なお,母親は,審判手続きには出席もしなかったようです。




本件は確定しているということです。



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