判例時報2256号で紹介された事例です(東京地裁平成27年1月7日判決)。




事案としては、次のような概要です。




・別居中の妻との離婚調停が不調に終わっていた男性が、職場の31歳の同僚女性に対し、「自分はバツイチだから」などといって、妻とはまだ離婚が成立していないのにそのことを隠して交際を申し込み、女性も、男性が独身であると思い、年齢のこともあり結婚を前提として交際を開始し、性関係をもったり旅行に行ったりする関係になった。




・男性と妻は、東日本大震災を契機に関係が修復され、遅くとも、平成24年5月には、妻との間で夫婦関係を持つまでに至った(平成25年春には子どもが生まれている)




・しかし、男性は、その間も、女性との間で交際を続け、交際途中で、女性は、男性とは結婚しても性格的に合わないかもしれないと思い、別れをほのめかすメールをした際も、男性は、「これからもたくさん大切にしたいと思っているよ」「結婚のことはあせらずのんびりでいいんだよ。だからまたプロポーズするね。」「二人とも愛し合っているんだからそして大切だからはぐくんでいこう」とか「「さみしい思いさせてごめんね、一緒にしたいよ」といいったメールを送るなどして、自分に妻がいることを隠して、さらに女性との関係を継続した。




・そして、ついに、女性が、結婚退職したい旨を告げた際も、男性は反対することもなく、女性が職場の上司にその旨を告げた後も「了解!」「びっくりしただろうね。」といったメールを返信し、あたかも、女性の退職を肯定するかのような態度をとった。




・女性が、男性の携帯のメールを見た際に、男性の母親から「○○ちゃん(男性の妻)と仲良くね」といったメールが来ているのを知り、問い詰めたところ、男性は「それは妹のこと」といった弁解した。




・さすがに怪しいと思った女性が弁護士に相談し、弁護士が戸籍などを取り寄せて調べたところ、男性には妻がいることが発覚し、女性は、ショックを受けて男性との連絡を絶った。




・女性が連絡をしなくなった後も、男性は「連休何しているのかな。会いたいし、話したいよ」などといったメールをした。





このような事実を認定した上で、裁判所は、男性が妻との間で夫婦関係をもった時期以降に、男性が、既婚者であることを隠して女性との関係を継続した点については、女性の人格権を侵害する不法行為であるとして慰謝料100万円の支払いを男性に命じました。

男性が、女性に対して交際を申し込んだ時点では、男性と妻との関係は別居状態にあり、男性が女性と真剣に交際する意思がなかったとまでは言えないとしています。





本件では、女性の人格権侵害という理由で慰謝料が認められているところ、婚約不履行という構成で慰謝料請求することも可能です(女性側の予備的請求原因となっています)。

既婚者との間で婚約したとしても、それは重婚的な婚姻予約となり、法的保護に値しないのではないかという論点がありますが、既婚者側のやり方があまりに汚い場合には、そのような理由での慰謝料請求も認められるものとされています。

本件では、そもそも女性は男性が既婚者であることを知らなかったので、婚約不履行という構成であったとしても、慰謝料請求は認められていたのではないかと思います(婚約不履行ということであると、退職後の逸失利益といったものも損害として含まれてくるように思います)。




本件について控訴されているかどうかは不明です。








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