判例タイムズ1411号で紹介された事例です(東京地裁平成25年2月20日判決)。



医療法人が、税理士法人に対し、租税特別措置法に定める特定医療法人の承認を受けるための業務を委託したところ、その承認を受けるためには、法人が役員に対して有する貸付金が存在していることがネックになるということが分かり、税理士法人は、決算書上載っている、役員に対する貸付金を出資差額に振り替えて貸付金を消し込むという会計処理(本件会計処理)を行うことを提案し、実際に実施されました。



ところが、税務署から、この方法は、法人から理事に対する債権放棄となるとされ、法人については貸付相当部分に相当する源泉所得税、不納付加算税が、当該理事については相当部分の賞与を受けたとして住民税が、それぞれ課税しされることとなり、法人及び理事は合計で2億円超の納税をすることになってしまいました。



そこで、法人及び理事から、税理士法人に対し、きちんと説明してくれていれば貸付金を出資差額に振り替えるというような本件会計処理はしなかったとして、納税した金額に相当する部分の損害賠償請求が提起されたというのが本件です。



まず、法人・理事側は、貸付金が存在しないことを前提として本件会計処理の提案をしたことが誤りであると主張しましたが、税理士法人において理事に対するヒアリングをしたところ、法人に貸し付けをしたという認識はないという回答であったことなどから、実態のない架空の債権であると考えたこと自体に不合理な点はなく、それを前提とした本件会計処理を提案したこと自体には注意義務違反はないとされました。




次に、本件会計処理を実施した場合に、税務署により、貸付金の債権放棄・債務免除として認定され、課税されるリスクがあり得ることについては、当該課税処分が妥当であるかどうかはともかく、十分に予見できる、予見すべきことであったとされ、このリスクを説明しなかった税理士法人には説明義務違反があると認定されました。




また、担当の税務署からは、税理士法人に対し、本件会計処理を撤回するように勧告されていましたが、税理士法人では、法人らに相談することなく、税務署に対して撤回を拒否する回答を行い、法人に対しては事後報告をしたに留まっていました。なお、報告に当たっては、本件会計処理を撤回した場合には、貸付金が決算書上残ったままとなるので、利息に対して課税がなされるとし、その金額などが記載された資料が添付されていました。

この点に関し、税理士法人としては、本件会計処理を実施した場合のリスクについてきちんと説明すべき義務があり、説明義務を怠ったと認定されています。




それでは、税理士法人に対して、法人・理事が納付した税金相当額の支払いが命じられたかというと、そうではなく、裁判所は、仮に、税理士法人が課税リスクを説明していたとしても、法人においては、それでもも本件会計処理を実施していた可能性があるとし、説明義務違反と損害との間の因果関係を否定したため、課税相当額の損害賠償は認められませんでした。



ただ、説明を受けることにより会計処理に関し自ら意思決定を行う機会を失ったことが損害であるとし、1000万円の損害(個人でいうところの慰謝料のようなもの)を認めました。



説明義務違反で1000万円の損害賠償というのは相当高額ですが、巨額の課税処分を受けた後に納税資金を調達しなければならなかったことなどが重視されたようです。




本件は控訴されているということです。




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