やや旧聞に属しますが、判例時報2244号などで紹介された最高裁の判決(平成26年3月28日)です。ニュースなどでも取り上げられましたが、同じ日付で、同じ第二小法廷から、一つは無罪、一つは有罪と、結論を分けた判決がそれぞれ下されています。



事案は単純で、暴力団員の利用を断っていたゴルフ場に対して、暴陸団員であるということを申告しないままプレーしたことが、ゴルフ場施設を利用してプレーするという財産上不法の利益を得たとして詐欺罪となるかということが問題となりました。




一審、控訴審とも有罪となり、最高裁で無罪とされた事案について、多数意見は、本件ゴルフ場では暴力団員の利用を拒否する旨について看板や利用細則、約款などで規定していたとしても、従業員が積極的に確認したり誓約を求めたりはしていなかった上、被告人が記入したビジター受け付け表等には暴力団員であるかどうかを確認する欄はなく、被告人は、氏名等を正しく記入して提出していることや被告人が料金を支払っていることなどから、被告人がビジター受け付け表に氏名等を正しく記入してゴルフ場に提出した好意は、「自らが暴力団員ではない」ということを積極的に表明する行為(挙動による欺もう行為)にはあたらないとされました。本件ゴルフ場を含めて周辺のゴルフ場においても暴力団関係者による利用について黙認されていたという実態もあったということも指摘されています。




なお、本判決では、小貫裁判官の反対意見があり、本件では、被告人は2つの別々のゴルフ場でのそれぞれのプレーについて詐欺罪に問われ、多数意見では、いずれも無罪とされていますが、小貫裁判官の反対意見では、会員の紹介に限らずビジターのみの利用に―も認めていたゴルフ場については多数意見に賛成だが、会員の紹介による利用のみを認めていたゴルフ場については、会員の人物保証によって暴力団排除を実効性のあるものにしようとしていたとして、このような場合には、利用の申し込み行為の中に「自らは暴力団員ではない」という騙す要素が含まれているとして詐欺罪とすべきだとしています。




もう一件の原審の有罪判決が維持されたケースでは、被告人の共犯者が当該ゴルフ場の会員でしたが、入会に当たっては、暴力団員ではないことの確認や暴力団関係者の同伴をはないことを誓約していたこと、共犯者は被告人が暴力団員であることを発覚することを恐れてフロントに氏又は名を交錯させた表記により組み合わせ表を提出して従業員に署名簿への代筆を依頼していたこと、被告人自身も当該県内での暴力団関係者のゴルフ場利用については厳しいものであることを認識していたことからフロントに寄らずに直接プレーを始めるなどしていたことから、被告人が共犯者と共謀して、自らが暴力団員であることを積極的に隠し、ゴルフ場を騙していたと評価できるとして詐欺罪の成立が認められました。




契約書などで反社会的勢力排除条項が規定されることは珍しくなくなり、むしろ、必須といってもよい状況となっています。銀行でも口座を開設する際には、かならず、反会的勢力ではないことについての確認、署名押印を求められます(たとえ、裁判所が発行した破産管財人の証明書を持って行き「弁護士です」と名乗っても求められます。ちなみに、ちょっとイラっとはしますが仕方ありませんね。。)。





■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。