判例時報2206号で紹介された事例です(富山地裁平成25年9月10日判決)。




判決により認定された本件事実の要旨、判断等は次の通りです。




本件で、原告本人は法律知識のない一般人でしたが、平成2年から23年まで、大手信販会社との間でキャッシング取引を行っていたことから司法書士のもとに相談に訪れ、再計算したところ、約1080万円もの過払い金が発生していることとなったようです。




司法書士が代理できるのは140万円までの事件ということになっているので、(140万円の算定方法についてはいろいろと議論があるものの)少なくとも本件では1社に対して1080万円の返還請求を求めるものですから、司法書士では代理することができません。




また、140万円を超える請求額の事件については簡裁ではなく地裁に管轄があり、地裁では当事者本人が訴訟手続を行うか、代理人を立てる場合は弁護士しか代理人にはなれないこととなっています(民訴法54条1項)。




本件の司法書士は、必要な書面の作成提出は一切を自らが行い、そのために、原告本人の印鑑を預かり、自分の判断で訴状その他の書面について預かった印鑑を押印して作成提出する、期日には依頼者である原告本人に出頭させ、訴状等の陳述をさせるほかは、和解の提案があったときはこれを拒否するという対応をさせるという処理方針を立て本件をそのように処理しました。




具体的には、司法書士が作成した原告本人名義の訴状を裁判所に提出後、裁判所から第一回期日の指定がありましたが、「期日請書」という書面も司法書士が作成して原告名義の印鑑を押印して、司法書士の事務所から裁判所に宛ててファクスしました。




また、裁判所や信販会社の代理人弁護士からの書面の送達を受け取るための送達受取人として、司法書士の事務所を指定して届出し、弁護士からの書面の送達を受けたうえで、その後の準備書面などの書面についても司法書士事務所からファクスしていました。



司法書士が原告名義で送った書類の中には「和解に応じる意思はありません。本件審理を速やかに進めてください」といった内容の記載がされたものがあり、さらに、意見書・陳述書と称した書面もあり、それは、過去に当該司法書士が委任を受けた依頼人(原告本人とは一面識もない)のもので、「裁判官に強引に和解を進められて不本意な和解をさせられた」というようなことが記載されていたということです。


本件は、弁論準備期日という非公開の手続に付され、その手続においては、司法書士は手続への同席は認められませんでした。

その手続において、信販会社の代理人弁護士からは、原告本人に対して「なぜ和解ができないのか」と質問がされたりしましたが、原告からは「その意思がないから」という回答がされたということです。




本件では原告本人の尋問が実施されたうえで判決となりましたが、弁論終結前には裁判官の忌避申し立てなどもされたということです。





結論として、本件においては、本件の訴訟手続きは民事訴訟法54条1項に規定する弁護士代理の原則に違反するもので無効であるものと判断され、訴えの却下(門前払い)となりました。

確かに司法書士は裁判書類の作成をすることはできるが、それはあくまでも依頼人本人の判断に基づく範囲においてなされた場合のみすることができるのであり、本件では、司法書士がその独自の判断で作成したものであって、司法書士の職務範囲を逸脱するものと判断されました。




なお、民訴法54条1項の弁護士代理の原則に違反した訴訟行為は無効であるとしても、本人がそれで構わないとして追認した場合には有効になるのではないかという論点があります。

例えば、業務停止中で業務ができない弁護士(その時点では元弁護士というべきでしょうか)に対して、そうとは知らずに訴訟委任してしまった場合、当該弁護士が行った訴訟行為は無効ということになりますが、後になって事情が分かった場合、本人が追認すればよいのではないかということです。




しかし、本件では、原告本人は自らや司法書士の行為が民訴法54条1項に違反するものであることを分かっていていたのであるから(司法書士はともかく原告本人がそこまで理解していたのかどうかは多分に擬制的ですが)、追認しても過去の訴訟好意は有効にはならないと判断されました。

弁護士代理の原則は本人の利益のみならず、事件屋の跋扈を防ぐなどとの公益目的もあるものだとされています。




本件では訴え却下となりましたが、原告本人は平成23年まで当該信販会社と取引していたということですので、後で、自分自身でまたは弁護士に依頼して訴訟をきちんとやり直せば過払い金はきちんと取り戻すことができます。

本件では問題となりませんでしたが、消滅時効中断のために訴訟提起したものの、後で弁護士代理の原則に反するとして訴訟提起が無効とされてしまったような場合には、訴訟のやり直しができないという重大な結果を引き起こすということになります。




本件は確定してるということです。







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