判例時報2206号で紹介された東京地裁の判決です(平成25年6月18日判決)。



土地建物を代金8億5000万円で売却した売主が,約定期限までに代金を支払わなかった買主に対して,売買契約解除の上,違約金として1億7000万円の支払いを求めたという事案です。




買主側は,売買契約書に定められた境界画定書や土地家屋調査士による確定実測図等の原本が交付されていないとして,同時履行の抗弁を主張しました。

同時履行の抗弁というのは,当事者双方が追っている義務は,同時に履行しなければならず,一方の義務だけを先に履行するように(先履行)求めることはできないというものです。

不動産売買の場合,不動産の移転登記義務,引渡義務と代金の支払いが同時履行に立つことは明らかであり,実際の決済の現場としては,当事者双方,ローンによる決済をする場合は金融機関担当者,司法書士などが立ち会って,司法書士が登記に必要な書類を確認した後,送金手続に入ります。



不動産売買の契約では,特約として,売主による隣地所有者の署名押印がある境界画定書や確定実測図等の交付義務が定められていることがありますが,本件では,この交付義務と代金支払義務が同時履行の関係に立つのかが問題となりました。



感覚的には同時履行関係を認めてよいようにも思いますが,本件では否定されました(売主の勝訴)。




というのも,本件では,もともと登記簿免責を基準とした現状有姿による売買とされていたところ,売買契約書が作成される段階になって,買主の要望を受けて境界確定図等の交付義務が定められたという経緯でしたが,その測量費用等については買主負担ということになっていました(通常は売主が負担すべきものとなるところでしょう)

つまり,売買代金自体は確定測量図等が反映されているものではなく(そうだとすればもっと価格が高くなる),そうすると,売買代金と確定測量図の交付義務の間には価値的なバランスが取れていないということになり,同時履行を認める基礎を欠くという訳です。

また,売買契約書には,売買代金の受領と同時にしなければならない売主の義務としては所有権の移転ということのみが明示されていました。



なぜ確定測量図の交付ができなかったかについてですが,東日本大震災の影響で,官民査定までできなくなってしまったということのようです。




弁護士が,破産管財人や後見人,相続財産管理人などの立場において業務として,不動産を処分することがありますが,売買契約書にはなるべく,売主としての余計な義務を負わされないようにしているのが通常です。

しかし,私は,とある案件で,境界画定や確定測量図等の交付義務を規定した契約書を締結してしまったことがあるのですが,実際には測量士がするのですが,ややこしい事情のある隣地所有者からの境界確認の取り付けや官民査定となると地域によってはとても時間がかかることなどがあり,買主と交渉して,現状有姿に近い形で契約を巻き直したことがあり,以降はとても気を付けています。




なお,本件は控訴されているということです。





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