弁護士業界ではすでに旧聞に属するものですが,判例時報2199号などで紹介されている最高裁の判決です(平成25年4月16日判決)。


当該弁護士は,2社に対して,元本の8割程度の一括支払いの弁済提案をしましたが,この提案に応じない場合には預かっている過払い金は債務者に返還した上で,消滅時効の経過を待つという方針を連絡しました。


ある弁護士が債務者から5社の債務整理を受任し,うち3社からは過払い金として約160万円を回収したものの,2社に対しては債務が残るという状況になりました。



2社のうち1社はこの提案を受諾したものの,1社は応諾せず,残債務として約30万円が残ったままとなりました。


弁護士は方針通り,回収した過払金の中から,弁護士費用や上記1社に対する弁済金を差し引いたうえで,債務者に対し約48万円を返金しました。つまり,過払金の中で残債務の整理はできていたということとなります。

私でしたら,残債務はすべて弁済処理した上で残ったお金を債務者に返していたと思います。




債務者に残金を返金してから約2年9か月後,弁護士は,債務者に対して「消費者金融の経営状態が悪くなっているので以前よりも提訴される可能性が高まっている」と告げ,12万円程度の資金が準備できれば一括弁済の交渉をすると提案しましたが,債務者は,弁護士の方針の不安を抱き,結局,当該弁護士は解任したうえで,別の弁護士に債務整理を依頼しました。その後,新たに選任された弁護士が,和解金50万円を分割弁済する内容で和解したということです。




そして,債務者は,弁護士に債務整理の方針についての説明義務違反があったことを理由として弁護士に対して慰謝料等の請求をしたというのが本件です。




一審では債務者側の主張を認めて弁護士に対して約22万円の支払いを命じましたが,高裁は,債務者は弁護士から時効待ちの方針について説明されそのことについて異議を述べていないことなどから,弁護士による説明義務違反は認められないとして,弁護士の逆転勝訴となりましたが,上告を受けた最高裁は,やはり弁護士には説明義務違反があったと判断しました。




その理由としては,弁護士が時効待ち方針を採るのであれば,不利益やリスク(時効待ち方針を採って期間が経過した後,時効期間内に提訴されると遅延損害金を含めた敗訴判決を受けるなどのリスクがあります)について説明したり,回収した過払金の中から債務を弁済するという選択肢も説明すべきであるが,本件で,弁護士は,「裁判所や債権者から連絡があったら伝えてくれれば対処する。」「交渉に際して必要になり得るので預り金は保管しておいた方が良い」という説明はしていたが,リスクの説明や過払い金の中から弁済するという選択肢を提示したことは窺えないとして,説明義務違反が認められるとしました。




先ほども少し書きましたが,過払金の中から債務が弁済できるのであれば,満額提示するかどうかはともかくとして(私であれば,過払金ですべての債務元本が支払えなければ,債権額に応じた按分額を提示すると思います。),過払金を使って債務の清算をするのが通常かと思います。依頼人(債務者)の意思(依頼内容)としては,債務の清算をしてほしいというものだからです。





もっとも,例外的に,時効待ち方針を採ることもあります。

例えば,当方の計算では過払となるが,債権者の計算では残債務が残ってしまうような場合です。取引の中に空白期間があるような場合は計算方法を巡って争いとなることがあり,過払金の返還を求めてこちらから手を出すと,逆に,返り討ちに合って残債務の請求が認められてしまうという事態が予想されることもあります。

ただ,このようなケースでも,依頼人である債務者には,遅延損害金のリスクなどをよくよく説明し,また,債権者に対してもあくまでも当方の計算では過払金となることについて意思表示しておくことが必要です(債権者側から「何の連絡もなく放置された」というクレームが来ることを避けるためです)。

そして,そのままこう着状態になって,そのままま時効を迎えたというケースが何件かあります。




また,弁済することは不可能なのに,「絶対に破産や個人再生などの法的手続きは取りたくない」という人もいます。また,破産の費用もねん出ができず,諸事情あって法テラスも使えないという人もいます。

このような人の場合基本的に受任することはありませんが,成り行き上,受任に至ってしまうことがあります。

このような場合も,依頼者に対しては提訴される可能性についてよく説明したうえ,債権者からの問い合わせに対しても「こちらからは法的手続きを取ることはなく,分割弁済の提案もできない。申し訳ないけど,提訴してほしい。」と伝えます。

こちらについても,そのままこう着状態になって(提訴されることもなく),そのままま時効を迎えたというケースが何件かあります。




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