金融・商事判例1426号で紹介された執行抗告に関する東京高裁平成25年7月12日付決定です。



本件で競売に出された不動産(土地)の隣地には暴力団幹部が住んでおり,本件土地については,その所有者がAという会社に賃貸し,そのうえで暴力団関係者が駐車場としてこれを利用していました。

但し,Aの占有は買受人に対抗することができないもので,買受人としては,法的にAやその占有者に対して明渡を求めることができるという状態でしたが,そのためには,事実上,買受人は暴力団関係者と折衝しなければなりませんでした。




本件で,競売手続のために裁判所に備え付けられていた物件明細書や現況調査報告書には,隣地建物居住者が暴力団幹部であることについて記載はなく,買受人が売却許可決定後に自ら調べて判明したことでした。



買受人としてはそんなことであればこんな競売物件には手を出さなかったということで,民事執行法75条1項に基づいて,売却許可決定の取り消しを求めました。

民事執行法75条1項は,「最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。 」と定めていますが,買受の申出をする前にすでに発生していた損傷や物理的損傷以外にも不動産の価値を著しく損なう場合にも類推適用がされるものと考えられています。




本件の執行裁判所(原審)は,暴力団関係者が駐車場として利用しているということはリスクではあるが,そのようなリスクは競売物件であるということによる減価修正がすでにされており,不動産の価値を著しく損なうものではないとして買受人の主張を認めませんでした。

このような原審の考え方については一定の根拠があり,競売不動産の評価マニュアルという書籍には,(1)当該物件が組事務所として利用されている場合(2)近隣建物が組事務所として利用されている場合には,競売市場での修正のみでは効かずにさらに市場性修正が必要となるとされているが,(3)占有者が精神的問題を抱えている場合(4)寝たきりの老人がいる場合(5)暴力団幹部が居宅として利用している場合などについては,競売市場の減価修正によって既に反映されているとされています。




しかし,高裁では,本件については,本件土地の引き渡しを受けるためには暴力団関係者との折衝を含む容易ならざる対応を迫られる蓋然性が高いこと,本件土地の利用に当たっては隣地に居住している暴力団幹部などとの関係に一定の配慮をせざるを得ないことなどの事情があり,暴力団に対する規制が次第に強化される昨今の情勢を踏まえると,競売による減価修正だけでは反映しきれない価値の減少が認められるとし,買受人の主張を認めて,売却許可決定を取り消しました。




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