金融・商事判例1425号で紹介された事例です(東京高裁平成25年4月18日判決)。



本件は,妻が自衛官の夫との離婚に伴う財産分与請求権を保全するため,夫の国(防衛省)に対する退職金請求権を仮差押えしましたが,その後離婚と財産分与を求める離婚訴訟を提起し,勝訴したのは仮差押えから約14年も経ってから,というものでした。なお,仮差押えから約4年後,夫は退職金を受け取った上で自衛隊を退職してしまっていました。




妻は,夫に対する財産分与請求を認めた離婚訴訟の判決をもって,国に対して改めて本差押えをしましたが,国側は「夫が退職してから5年以上が経過しており,会計法が定める消滅時効を援用する」と主張して争いました(会計法では国に対する債権の消滅時効期間は5年とされており退職金請求権も含まれるとされています。)。




妻側は,約14年前にした仮差押えによって,退職金請求権の消滅時効は民法147条2号に基づき中断されていると主張しました。




消滅時効の中断というのは,それまで進行していた消滅時効がゼロにリセットされるというものですが,差押えや仮差押えに基づく中断の場合には,(仮)差押え手続が継続している限り効力が存続すると考えられているので,13年前にしていた仮差押えであっても,取下げなどで手続きが終了していない限り,今でも中断の効力が続いているのではないかと主張したというわけです。




しかし,一審裁判所も本高裁判決も,仮差押えによって消滅時効の進行が中断されるのは,保全された被差押債権(本件の場合の退職金請求権)ではなく,被保全債権(本件の場合の財産分与請求権)であるとし,妻側の主張は認めませんでした。

差押えなどで消滅時効が中断されるのは,差押えがされることによって権利についての一定の証明がされるからですが,証明されるのは被保全債権であって,被仮差押え債権ではないからという理屈です。本件は仮差押えが問題となった事案でしたが,差押えについて大審院の古い判例があり,これについても論拠とされています。




そうすると,せっかく仮差押えをしても,差し押さえた被差押債権の消滅時効を中断でき無くなってしまい不都合ではないかというところですが,この点については,債権者代位訴訟といって,債権者(本件の場合の妻)が第三債務者(本件の場合の国)を相手取って直接訴訟提起することもできるのだから不都合はないとされています。




なお,本件で,国は,仮差押えがされているのにもかかわらず夫に対して退職金を支払ってしまっています。

これはこれで問題のある行為ですが,仮に,消滅時効が完成しない間に,妻が離婚訴訟に基づくなどして国に対して支払を求めていれば,国は妻に対して二重払いをしなければならない立場であったわけであり,国が夫に対して退職金を支払ってしまったから妻が退職金相当額を受け取れなくなったという関係にはならないのだからということで,この点に関する妻の国賠請求についても退けられています。




仮差押えしたら早めに本訴訟提起しましょう。




なお,本件は上告受理の申立がされているということです。






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