判例タイムズ1393号で紹介された東京高裁の決定です。




7歳の子どもを連れて別居した妻(母親)に対し,夫(父親)が申し立てた子どもとの面会交流調停について,調停がまとまらなかったため,家裁は次のような面会交流についての審判をしました。

・頻度等 月1回 第3日曜日

・時間 午前10時から午後2時

・受渡場所 当事者間で協議して定めるが,協議が整わないときは,JR○○駅●口1階改札付近とする

・妻は,開始時間に受け渡し場所において夫に対し子どもを受け渡し,夫は終了時間に受け渡し場所において,妻に対し子どもを受け渡す




妻からの抗告を受けた高裁では,頻度等や受け渡し方法などについて,根拠となる情報が記録からうかがえず,また,妻が同居期間中に夫から暴力を振るわれたと主張している本件において夫と顔を合わせる方法により受け渡しをさせるというのはかなり無理がある,夫が妻に対する暴力を否定していない本件においては第三者機関等の利用を検討することがまず考えられるべきであるなどと述べて,審理を家裁に差し戻しとしました。




本件の経緯としては,妻の主張では,妻は同居期間中に夫から奴隷のように扱われ,たびたび暴力を受けていたところ,妻の不貞行為が夫に発覚したことから,夫から「一生かけて償え」などと言われて更なる服従を強いられるなどと考えたことから,子どもを連れて別居に至り,妻から夫に対して,離婚調停の申立がなされ,さらに,夫から妻に対しては子どもとの面会交流の調停申し立てがされたというものでした。






妻からは,夫との面会交流そのものについて否定すべきだという主張がされましたが,家裁,高裁ともその主張については認めませんでした。



子どもの面会交流については,夫婦の不和による別居に伴う子の喪失感やこれによる不安定な心理状況を改善させ健全な成長を図るために,子どもの福祉を害するような特段の事情がない限り,面会交流を実施すべきであるとしたうえで,本件では,夫が子どもに対して暴力をふるったということについては認められないことや,子どもが夫を拒絶しているという事情までは窺われないことなどから,面会交流自体は認められるべきであるとしました。




本件では,家裁による調査官調査の経緯も詳しく書かれていて,参考になります。

離婚調停,面接交流調停を通じて3回の調査官調査が実施されています。



1回目の調査・・・妻からの聞き取りでは「どうしても離婚したいこと」「現時点では面接交流は認められない」といった意向の聞き取り。別居後ようやく生活のリズムが整い子どもの小学生らしさが戻ってきた。

調査官が身分を告げずに子どもから事情を聴きとったところ,ざっくばらんにいろいろな話をしてくれて,前の家にいた時の思い出としてサンタさんがプレゼントしてくれたこと,クリスマスの朝起きた時両親から「プレゼントがあるよ」と言われて嬉しかったことなどを話した。

小学校の通知表では1学期は水泳を除いていずれの項目も「できる」とされ,生活面も「大変良い」とされている。




2回目の調査・・・妻との面接。夫に対する恐怖心や子どもが良い状態で生活していることなどから面会交流は拒否したいとの意向の聞き取り。




3回目の調査・・・子どもからの聞き取り。

調査官が調査の目的を説明すると元気がなくなり,表情が曇った。母親の話をすると笑顔を見せたが,前の家にいる時の思い出を尋ねると「ない」と答え,楽しい話はしなかったが,父親との楽しい思い出についてさらに聞くと,みんなで食べ物屋さんで食事したことを挙げた。調査官が「父親が会いたいと言ったらどうするか」聞くと,少し間をおいて「頑張っていく。」と答えた。

なお,この3回目の調査の後,妻(母親)から「会いたくないのに会いたいと言ってしまったといって泣いたりした。誘導があったのではないか。調査には応じられない」といった内容のクレームが入りました。


このような調査の結果を踏まえて,裁判所としては,子どもが母親が父親のことを強く拒絶し面接交流を拒否ていることを察しているといえること,両親双方に対する感情が入り交じり忠誠葛藤を生じている状況にあるというべきであるとし,子どもは父親に会いたいという意向を示していないとまでは言えないのではないかと判断しています。



そのような事情で子どもと父親が面会交流すること自体については認められるべきという家裁の結論は踏まえつつ,その具体的な方法として家裁が挙げた頻度や受け渡し方法については第三者機関の利用などの方法,仲介費用の問題があり難しいのであれば子どもが一人でも行くことができる受け渡し場所の設定を考えたり子どもが信頼できる第三者を解することなど,もっと検討すべきであるとして審理を差し戻しとしたものです。

調査の状況などからすると,子どもが両親の板挟みに苦しんでいる状況がうかがえ胸が痛む所があります。








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