占有移転禁止の仮処分

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不動産の明渡を求める場合,訴訟提起の前に,占有移転禁止の仮処分という保全処分を行うことがあります。




これは,民事保全法23条で「係争物に関する仮処分命令は,その現状の変更により,債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき,又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。 」とされていることから認められているもので,「現状の変更」すなわち,占有者が変わってしまって,せっかく勝訴判決を取ってもその後の強制執行ができないという事態を避けるために行われます。




どういうことかというと,Aが占有している不動産の明渡を求める場合はAに対して明渡を求める訴訟提起するわけですが,訴訟の途中や終了後に占有者がBに代わってしまったとすると,Aに対する勝訴判決では強制執行ができないので困ることになるというわけです。




そこで,占有移転禁止の仮処分をしておくと,執行官がAのところまで行って「今後,占有を移転してはならない」という旨を告知してくれ,部屋の中に公示書という張り紙をしてくれることになっています。そうすると,それ以降,占有を取得した者は,執行がされたことを知った上で占有を取得したものであると推定され,原則としてその後の強制執行に服することとなっています(民事保全法62条 先ほどの例でいえば,Aに対する勝訴判決でBに対する強制執行ができるということになります)。




無意味な勝訴判決を取っても意味がないので,不動産の明渡訴訟を提起する場合には,占有移転禁止の仮処分をかけておくことが原則といえます。

もっとも,占有移転禁止の仮処分をかけた場合はその分だけ弁護士費用は割増しになりますし,認められた場合に供託しなければならないお金のことや執行官に対し支払う費用などのことも考えて,しないこともあります。




するかどうかは依頼人の判断ですが,弁護士としては,占有移転禁止の仮処分のことを説明したうえで,リスクの判断をしてもらうことになります。




占有移転禁止の仮処分の手続としては,東京の場合,保全部に申立書を提出し,裁判官と面接して,認められる場合には,決められた供託金を供託します。供託金の額はケースバイケースですが,賃貸借契約を前提とした主張の場合(典型的には賃料不払いによる賃貸借契約の解除に基づく明渡)には賃料相当額の1~3か月分程度でしょうか。契約もないのに勝手に不法占拠されているなどの賃貸借契約を前提としないケースであれば,物件価格の1~3割というところかと思います。




占有移転禁止の仮処分の場合,供託後,供託書原本や書類を裁判所に提出すると,早ければ,その日の15時くらいには,発令の上,決定書を交付してもらえます。

遅くても翌日の午前中には決定書をもらえると思います。




銀行預金の仮差押えなどの債権の仮差押えの場合ですともう少し進行が遅くて,供託書等の書類等を裁判所に提出して翌日夕方とかになると思います。

ですので,決定書を受け取ると,その足ですぐに同じ建物内の執行官室に行って,執行の申立をします。




ですので,執行の申立書や委任状については前倒しで準備しておかないといけません。




その場で,執行日時が決められるとよいのですが,東京地裁本庁の場合,執行か円に対する予納金(占有者一人について3万円程度)を納付した翌日の朝一番で執行官と面接して決めることになっているので,どんな急いでも1日は待たされます。




仮処分の執行は,決定書を受け取ってから2週間以内に着手しなければならないのですが,東京地裁本庁の場合,1週間以内に執行日時を設定するようにしています。これは,仮処分決定を出した保全部では,仮処分の決定を占有者に対して発令から1週間以内に決定書を送る運用をしているので,執行の前に占有者に決定の事実を去られてしまい,占有移転の工作をされてしまうことになるためです。




 弁護士も執行官も向こう1週間の予定は埋まっていることも多いのですが,何とかねじ込んでスケジュールします(執行の現場に債権者代理人である弁護士は立ち会わなくてもよいのですが,現場の説明などのため,普通は立ち会わせてもらいます)。1週間以内に執行日時がどうしても入らないときは,保全部にその旨を上申し,決定の送付を遅らせてもらうことになります。



債権者代理人である弁護士は,中にまで入る権利はないので,外から内部をチラッと見る程度です。



執行当日は,通常の強制執行と同じで,現場で,執行官や立会人開錠業者と待ち合わせて,占有者を呼び出し,不在や居留守を使った場合には,無理やり鍵を開けて中に入ります。執行官にもよるのでしょうが,私が立ち会った多くの場面では,執行官はかなりしつこく「○○さん,いますか~」「裁判所の者ですが~」と言って呼びかけた上で,それでもダメという段になって,初めて開錠していることが多いように思います。


占有者にしてみると,不在などでおらず,帰宅したら公示書がペタッと張ってあったりするとかなり驚くのではないかと思います。




そして,さきほど述べた公示書を張り付けて執行終了となります。




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