http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131010/k10015177571000.html


 

警察官は、「無事に家に着きましたか」と尋ね、女子生徒は「はい、大丈夫です」と答えたということで、警察官はさらに9日以降の対応について数分、会話したということです。
池永容疑者は当日の午後に、鍵が掛かっていなかった窓から女子生徒の自宅に侵入し、生徒の帰宅を待ち伏せしていたということで、室内で電話のやりとりを聞いていたとみられるということです。
警視庁は電話が終わった直後に女子生徒を襲った可能性が高いとみて詳しいいきさつを調べています。
(本日配信のNHK NEWS WEBより引用)


 



痛ましい事件ですが,本件のようにストーカーが高じて殺人等の重大な被害が発生した場合に,警察の対応というものが正しかったのかということがいつも問題となります。



本件では,最初に相談を受けた杉並署が三鷹署に連絡しなかったことなども取り上げられていますが,警察が介入したことを知らせてしまったことの妥当性も問われているようです。



弁護士も,ストーカー被害の相談を受けることがあり,その際,被害者とよくよく話し合うことの一つは「今のタイミングで弁護士であることを名乗ったうえで介入してしまってよいか」ということです。闇金融の被害者対応についても同じようなことが言えます。



弁護士であると名乗ったうえで電話や手紙などで加害者に対し警告してしまった場合,かえって加害者が激高してしまい,危害が加えられないかということは弁護士としてもとても気を使います。

そもそも,弁護士自身が,ストーカーやDV,また暴力団が関与しているような事案などで介入した場合には,事務所のメンバーに対してそのような事案を引き受けていることを注意したり,事務所のセキュリティーを厳重にしたりして警戒を強めますので,当然,被害者(相談者)にもそのような気配りをするわけです。




本件では,三鷹署では相談を受けて加害者に対し警告のための電話をしており(加害者にはつながらなかったようですが,末尾0110の警察番号であることは着信履歴で分かったことと思われます),また,帰宅した被害者に対して安否確認の電話も入れており(この電話自体を潜んでいた加害者が聞いていたということのようですが),おそらく,担当した警察官としては多忙の中でも「やることはやった。」と思っているのではないかと思います。





そうすると,問題としては,仮に加害者が警察からの着信履歴があったことなどから,「警察が介入していること」を知ったとしても本件が防げなかったのであるとすれば,「警察と名乗った上での警告」を行うタイミングについてもっとよく検討しなければならないということになります。





私も,ストーカー被害者に付き添って警察に相談に行ったことがあるのですが,最近はストーカー事案について留意するように上からの通達がされているものと思われ,警察官は割とすぐに加害者に対して警告の電話はしてくれるように思います。

ただ,「警察から電話があったと知らせることになるけどいいですか?」と聞かれ,それで躊躇する被害者がいることも事実なのです。警察が介入したことを知られた場合の加害者側のリアクションがどうなるのかよく分らないし,警察がどこまで守ってくれるのかと言えば「なんかあったらすぐに連絡してください」とか「パトロールを注意するように交番に伝えときます」程度の対応しかしてくれないことの方が多いため,「逆切れされたら怖い」と感じてしまい,「もう少し考えてみます。」となることも多いのです。





おそらく,本件でも,警察官は被害者側に対して「警告電話すること」についての同意はとった上で加害者に対して電話を掛けたものと思います。





いつかのブログでも書きましたが,やくざなんかよりも,素人のストーカーやDV加害者の方が,法律お構いなしで向かってくることが多く気を付けなければならないと書きましたが,警察と名乗った警告をしたから加害者がビビって手を引くだろうという考えがあるのであれば,その考え自体を改めなければならないのかもしれません。

警察官による警告をストーカー防止のための手段として規定しているストーカー規制法自体がこのような考え方に立脚しているのであれば,そのような考え方,立法事実自体を検討し直さなければならないのかもしれません。



被害者の安全が確保しきれていない状況で,警察介入を知らせてしまうと,かえって加害者を逆切れさせることになるということについては,一般経験則として頭に叩き込んでおく必要があるのではないでしょうか。ストーカー事案ではありませんが,宇都宮のリンチ殺人事件でも,警察官が加害者たちに名乗ったところ,被害者が殺されてしまったということもありました(この件はこれ以外にも職務怠慢としか言いようがない手落ちが多々ありましたが)。





では,どうすればいいんだということになりますが,こういった事案では,警察だけで解決するという視点を捨て,ストーカ被害防止の活動をしているNPOとか自治体,場合によっては弁護士などの色々な関係者が力を合わせて対応するということが必要なのではないかと思います。

ストーカー,DV事案があった場合の一時避難所の充実や退職警察官のOBに協力してもらって付添ボランティアのサービスを作るとか,いろいろな力を組み合わせて対応していかなければならないのではないかと思います。




警察介入を知らせるタイミングとしても,もっと慎重に,かつ,迅速する仕組みも考えなければならず,加害者の携帯電話が分っているのであれば,位置情報をすぐに携帯電話会社から入手できる法的根拠をストーカー規制法に持たせ,被害者との位置関係を把握してから行えるようにするなどの仕組み作りといったものも検討してよいのかもしれません。






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