判例時報2187号で紹介された裁判例です(山形地裁平成25年3月5日判決)。




死亡した山形県の職員の退職手当金を巡る紛争ですが,山形県では退職手当条例で,死亡した職員の退職手当を受け取ることができる者について,「子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹で,職員の死亡当時その収入によって生計を維持していた者」(生計維持要件)と定めていました。

また,生計維持要件により職員の収入で生計を維持されていた者がいない場合には,子,父母,孫,兄弟姉妹の順序で退職手当金が支給されるとされていました。



このような生計維持要件については遺族年金の支給など社会保険給付の際には要件となっており,戸籍上の妻と内縁の妻の間の紛争など多数の裁決例があるのですが,民法による法定相続に頭の慣れてしまっている私のような弁護士などにはすぐにはついていけないところがあります。



本件で死亡した職員には,離婚した妻との間に3人の子がいましたが,そのうち上の2人についてはすでに独立していて生計維持要件を満たさないことに争いがなく,一番下の子どもについては,離婚した妻のもとで暮らす大学生であり,当該職員からは養育費として月4万円の送金を受けていました。




当該職員は死亡当時,父母と住民票上の住所を同じくしていましたが,世帯は別であり,住んでいた家屋についても,全く同じ家屋というわけではなく,渡り廊下でつながれてた別棟ということであったようです。

また,死亡した職員の両親は,年金や不動産所得があり,水道光熱費についても職員とは別に契約し支払っていました。




このような条件で,県は,職員の両親が生計維持要件を満たすとして,両親に対して退職金約846万円を支払いましたが,それはおかしいとして職員の子どもたちが提訴したのが本件です。





裁判所は,両親については生計維持要件を満たすとはいえないが,職員の一番下の子どもについても生計維持要件は満たさないと判断しました。




養育費も送金していたのだし生計維持要件を満たすとしてもよさそうにも思いますが,大学に入学してから母親(職員の元妻)から月5万円から10万円の仕送りを受けていたことや自らもアルバイトしていたことなどから,職員からの養育費によって生計が維持されていたとはいえないとしています。




結局,本件では死亡した職員の収入によって生計を維持されていた者はおらず,従って,生計維持要件により職員の収入で生計を維持されていた者がいない場合には,子,父母,孫,兄弟姉妹の順序で退職手当金が支給されるという条例の定めに沿って,既に独立していた子2人を含む3人の子どもたちに退職手当金を改めて支払うように命じました。




県側にとっては,両親に支払った後になって,「それは誤りだった」ということになり二重払いになります(勿論,両親に支払った分については不当利得として返還請求することができます)。

県側は,両親に支払った時点では債権者っぽい人たち(両親)に支払ったのだから免責されるという民法478条の規定を援用して争いましたが,裁判所では,この規定は私人間の取引を律するものであるとして,本件では適用できないとしています。




本件は確定しているということです。





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