判例時報2189号で紹介された事例です(大阪地裁平成25年1月29日判決)。



本件で販売された商品は,少人数私募債と呼ばれたもので,投資家から集めた資産を運用する受託会社は,バミューダ諸島の法律に基づいて設立されたという会社ですが,実際に資産運用を行っていたのはアメリカの証券取引委員会に登録された投資顧問会社でした。




当該私募債の販売を国内で代理したのが国内大手の証券会社であり,本件原告は,証券会社担当者の勧誘を受けて,平成19年11月8日,商品を購入しました。




ところが,平成20年12月に,上記投資顧問会社の代表者が詐欺容疑でアメリカ当局に逮捕され,平成21年6月には顧客資産をだまし取っていた罪(横領)により禁錮150年の有罪判決を受けるという事態となりました。



投資顧問会社が謳っていたSSC戦略なるものが,一種のねずみ講,机上の空論であり,原告が購入した時からそもそも投資顧問会社による資産の横領がされていたようなインチキ商品であったというわけです。




そこで,原告は支払った代金や手数料等約1億1800万円の返還を求めて,本件商品の販売代理をした証券会社を提訴しました。




その法律的な理由の一つとして,「そもそも横領がされているような商品であれば購入したなかった」という錯誤無効の主張をしましたが,裁判所は退けました。




裁判所の判断では,投資信託は資産運用者が定められた仕組みに従って資産を運用することが予定されているものの,その仕組みに従って運用されることが保証されているわけではなく,資産運用者が資産を横領することによって発生する損失の可能性は投資信託一般に生じ得るものである,本件原告がかつて証券会社に勤務して投資信託を扱っていたこともあったことや国内外の投資信託を購入していたこともあったことなどからすると,原告は本件商品がSSC戦略に従った運用がなされない(究極的には横領がされる)リスクも認識していたと言え,本件商品のリスクと原告の認識に齟齬(錯誤)はないとされました。



投資信託の資産運用者が横領する可能性まで認識しろというのはなかなか厳しいようにも思うのですが,本件の商品はバミューダ諸島の法律に基づいて設立された会社が受託会社であるという少人数の私募債というものであり(はっきり言って胡散臭い),私たちが普通に想定している投資信託というものとはやや違うものでもあり,また,証券会社に勤務していたという原告の経歴というのも判断に一定の影響を及ぼしているようです。

もっとも,そのような胡散臭い商品を国内大手の証券会社が販売しているのだから,信用してしまうだろうという原告の主張も実によくわかります。



ただ,当該判例時報の解説では,金融商品の売買を巡る訴訟において主張される錯誤無効の主張に関し,売買当時に存在していた一定のリスクが後で発覚したとしても,それは程度問題にすぎず,そのようなリスクがないことが契約の内容となされていない限り,なかなか錯誤無効を主張するということは難しいようです。




本件ではその他の適合性原則違反といった原告の主張についてもすべて退けて原告の請求を棄却しています。




本件は控訴されているということです。






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