判例時報2188号で紹介されていた最高裁の事例です(平成24年9月6日)。




最高裁では,原則として事実認定が正しいかどうかという問題についてはタッチしない決まりになっています。あくまでも,高裁までの段階で認定された事実をもとにして,法令の適用として正しいか,また,そもそも適用した法令が憲法に適合しているかどうかということのみを判断するという建前になっています。




もっとも,刑事であれば事実誤認があってその場合著しく正義に反する場合には最高裁も独自に事実認定に口出ししてもよいということになっていますし,民事であれば事実の認定が経験則に照らしておかしい場合には経験則を法令に準じるものとして考え,上告受理の上,原判決の事実認定を変えることもできるということになっています。



本件では,売買契約書が作成されていないが,当事者間に不動産の売買契約を認めた高裁の事実認定について,経験則違反を理由に破棄しています。




事案としては,不動産の開発事業を巡るトラブルです。

Aが対象地域の土地を購入し,そのあと登記完了後に改めてBに対し土地を10億円で売却するという協定書を締結し,Aが土地を買っていきましたが,本件土地をAが購入した後,Bとの間で売買契約書を交わさず,購入した土地を協定書に従ってBに移転するということをしなかったため,BがAに対し,売買契約に基づいて土地の移転登記を求めた訴訟です。




一審判決は売買契約を不成立としてBの請求を棄却しましたが,高裁は,協定書を締結した時点での売買契約の成立を認めてBを勝たせました。




しかし,最高裁は,協定書には「Aが土地を購入した後にBとの売買契約を締結する」と書いてあるのだから,協定書が締結された時点で土地の売買契約が成立したとするのはおかしいし,そもそも協定書が締結された時点では,Aもその土地の所有権を取得しておらず,他人物売買ということになるが,この場合の登記原因としては後日Aが所有権を取得した時点での売買契約を原因とするというのが登記実務であるので,いずれにしても無理があるとしました。




また,本件土地以外の土地で,本協定書に沿って,個別に売買契約書を作成し代金金が支払われていた土地があったことから,本件土地については売買契約書が交わされていないことからしても,やはり,売買契約が成立していたとはいえないとしています。



なぜ,Aが個別の売買契約を拒んだのかについては判示文だけでははっきりしませんが,実際にはA,Bという単純なものではなく,買受人の地位が移転したりと色々とややこしい事情が発生したようです。




一般論でいえば,契約書がないから契約が成立しないということはありませんが(諾成契約),売買の対象物や売買代金の高低,これまでの流れから外れた処理であるかどうかなど,いろいろと総合して考えるということになるのでしょう。




■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。