判例タイムズ1390号で紹介された事例です(東京高裁平成25年3月19日決定)。




個人の債務者が自ら破産の申し立てをするのは(自己破産),債務が支払いきれなくなったことから,債務の支払の免除,帳消し(免責)を裁判所に認めてもらうためです。これを免責の申立,免責の手続といいます。




ただ,厳密に法的な手続きを分解すると,破産手続と免責手続というのは別個の手続であり,前者は破産者の財産を換価して債権者に分配するための手続,後者は支払いきれずに残ってしまった債務を以降支払わなくてよいかどうかを裁判所が決める手続です。





以前の破産法では,破産手続の申立をしたものの,免責の申立をし忘れるということがたまに起こり,後で改めて破産と免責の申立ができるのかということについて問題となっていたようなのですが,現行の破産法では,個人の債務者が破産申立した場合,免責の申立もしたとしてみなされるということになっています(破産法248条4項)。

以前の破産法では,破産手続の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間に免責の申立をしなければならないという規定しかなく,この期間を経過してしまった場合免責を受けることができなくなってしまい,その場合,改めて破産と免責の申立をできるのかということについて裁判例も積極,消極に分かれていました。




本件では,債権者による破産申立で,破産者自身が破産を申し立てたものではありませんでした。どうやら,破産の申し立てをした債権者(会社)は破産者が背任行為によって損害を与えたということを理由に破産の申し立てをしたようです。なお,こういう会社側から元の従業員に対する責任追及等を目的とした債権者破産の申立の相談というのはたまにあるのですが,債権についての立証や予納金の準備の問題がありなかなか債権者による破産申し立てまでは結びつかないことが多いです。ちなみに,この件では2月23日の申立で,破産手続の開始決定が4月20日ですので,破産手続を開始するかどうかの裁判所の判断に2か月かかっています。

この件では,裁判所は破産手続の開始決定をしました。

この場合,破産者自身による自己破産ではないので,前記したみなし規定が働かず,原則通り,破産手続開始の申立てがあった日から破産手続開始の決定が確定した日以後1か月を経過する日までの間に免責の申立をしなければならないのですが(破産法248条1項),本件では,破産者に代理人弁護士もついていたものの,この期間内に免責の申立がされず,期間経過後に免責の申立がされました。




そのため,裁判所は,免責申立について期間経過を理由に不適法却下としました。



免責が許可されていないということは,残った債務は法的にはそのまま支払わなければならない状態ということになるので,破産を申し立てた債権者(会社)は,これ幸いということで,動産執行や破産者(債務者)に対する連絡の要求など,強硬な取立てに及んだようです。




そこで,困った破産者(債務者)は再度の破産の申し立てを自ら行うとともに,今度は免責の申立も行いました。




東京地裁の破産部は,以前の破産手続きの際に,免責の申立がされていないのに,債権者(会社)は免責不許可の意見書を,破産者(債務者)は免責相当の意見書を出すなどそれぞれが免責の申立があったことを前提としたような活動を行っていたことなどの事情もあり,漫然と免責申立の期間が経過したというわけではなく,申立権の濫用とまでは言えない,また,債権者による強硬な取り立て行為から免れるため免責を得る必要性も高いなどとして,破産の申立,免責の申立もいずれも適法としたうえで免責許可の判断をしましたが,これに対して抗告がされたというのが本件です。

債権者(会社)としては,免責申立期間が経過したから不適法却下となったのに,また免責を申し立てることができるとすれば,期間を定めた意味がないではないかということです。




しかし,抗告審でも,東京地裁破産部の判断が支持され,本件再度の破産申立,免責の申立は適法とされました。




一般的な自己破産の申立の場合,免責の獲得ということが破産者側から見た場合手続の大きな目的ですので,このようなことは起こりませんが,債権者申立による破産手続の場合,破産者(債務者)側としては,そもそも債権の存否を争っていたり,自分で申し立てたわけではない破産手続ですから,どうしても積極的に関与しようという気にはならないこともあり,このようなことも起こり得るのだと思います。

債権者申立による破産の場合には,予納金の扱いなど,通常の自己破産とは異なっていることも多く,破産管財人や申立代理人,破産者代理人としては注意しなければいけないことも多くあるということだと思います。




なお,現在の東京地裁破産部の運用として,免責を受けられなかった者が再度の破産手続開始の申立をした場合にこれを認めるかどうかについて,

①新たに清算を要する資産や負債の有無

②当該申立の目的

③前件で免責許可が認められなかった事情等

を慎重に審理したうえで,明らかに申立の利益がないと認められる場合でない限り,いわゆる管財手続に乗せたうえで破産管財人による資産調査,免責調査を行うことになるとされているということです。











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