http://www.nikkei.com/article/DGXNASFD0902J_Z00C13A8CN8000/




 認知症の男性(当時91)が線路内に立ち入り電車と接触した死亡事故で、家族らの安全対策が不十分だったとして、JR東海が遺族らに列車が遅れたことに関する損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(上田哲裁判長)は9日、男性の妻と長男に請求全額にあたる約720万円を支払うよう命じた。

 判決によると、男性は2007年12月、愛知県大府市のJR共和駅の線路に入り、東海道本線の列車と衝突して死亡。男性は同年の2月に「常に介護が必要」とされる「認知症高齢者自立度4」と診断されていた。

 上田裁判長は、同居していた妻が目を離した隙に男性が外出し、事故が発生したとして「妻には見守りを怠った過失がある」と認定。別居している長男についても「事実上の監督者」とし、「徘徊(はいかい)を防止する適切な措置を講じていなかった」とした。

 男性の家族らは、妻は事故当時85歳で、常時監視することが不可能だったなどと主張。しかし上田裁判長は、介護ヘルパーを依頼するなどの措置をとらなかったと指摘。「男性の介護体制は、介護者が常に目を離さないことが前提となっており、過失の責任は免れない」とした。

(8月10日日本経済新聞オンラインより引用)



民法714条1項では,「責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。 」とされています。

 未成年者が不法行為を行った場合の親権者や判断能力が低下した状態で付される成年後見人など,本人に対し法律上の監督義務を負っている場合にはこの条文が問題となります。



また,同条2項では,「監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。 」とされており,法律上の義務を負わなくても,責任無能力者の生活の面倒を見ている事実上の保護者なども一定の責任が認められるということになっています。




判決の論理構成がどういったものかは分りませんが,妻については認知症の夫を見守るという注意義務を怠ったとして民法714条というよりも,直接の不法行為責任(民法709条)を認めたというようにも読めます。あまり大きな違いはないと思いますが。



また,別居の子どもにについては,「事実上の監督者」として,徘徊を防ぐしっかりした監督体制を取ることを怠ったということのようですので,こちらは民法714条2項に基づく責任を認めたというように読めます。




いずにしても,65歳の妻や別居している子どもが常時監督することは不可能であったと反論したのに対しこれを認めず,「男性の介護体制は、介護者が常に目を離さないことが前提となっており、過失の責任は免れない」というのですから,いやはや,これは厳しい判決ですね。




私も自分の両親が徘徊しないように鎖でもつけてベッドにしばりつけておくしかないのでしょうか。




具体的な事情がどうであったのかについてはそのうち判例誌にでも掲載されたら調べてみたいと思います。




徘徊していたということは,身体的な能力はそれなりにあったということなのでしょうから,それを常時見守っていて,徘徊しないようにしろということを家族や別居している子どもに求めるというのもちょっと酷なのではないでしょうか。

介護体制を整えるといっても,お金の面での限界もあると思います。本件でどうであったのかについては不明ですが。



これまでにも線路立ち入りという事実があったのか、いきなり線路に飛び込んでしまったのか,どんな歩き方であったのか,「奇声を開けながら歩く」など傍から見て異常は感じられなかったのかなどにもよると思いますが,駅側の監視体制はどうだったのか?ということも気になります。


何か特殊事情があったのかなど,早く判決文を読んでみたいですね。



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