後見開始審判前の保全処分

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後見,保佐,補助の審判が発効するのを待っていたのでは,本人の生命,身体が危険となり,または財産が侵害される恐れがあるような場合に,後見等の審判が発効するまでの間,家庭裁判所は,本人を保護するために保全処分をすることができるとされています(家事事件手続法126条1項,2項)。



「消費者被害を受けている高齢者を守るため早く保全処分を出してもらおう」とか「経済的な虐待を受けているので,早く財産を保全したい」ということで保全処分を活用するというのが本来の趣旨ですので,迅速に保全処分をしてもらえそうなイメージですが,実際のところはなかなか迅速に審理して保全処分を出してもらえるというわけにはゆかないようです。




保全処分を出してもらうためには,後見等の開始の蓋然性と保全の必要性という2つの要件が必要とされていますが,特に,保全の必要性というところが引っかかってなかなかすぐには保全処分を出してはもらえないようです。「後見人が就いてからでもいいじゃん?」という感じでしょうか。当事者が焦れば焦るほど,急かせば急かすほど,逆に,慎重になる,冷静になる,という習性が裁判所にはあるようです。

申立してから半年間も鑑定をやったり,関係人の審問をやったりして,「それでは保全処分を出しましょうかね」というスケジュールの案件も多いものです。

ですので,「緊急性がある件だから,まずはすぐに保全処分出してもらいましょう」というようなアドバイスをしてしまうと間違うことになります。




後見等の開始審判が発効するのは,後見人等の選任の審判書が関係者に送達されてから2週間経過後になり,さらに,即時抗告などを出されると,審判の確定が遅れて後見人等として活動する時期が遅れるということになります。




ですので,この後見等の審判が確定するまでの期間にも,本人のために財産管理を行うような必要性がある場合に保全処分が認められるということになります。

よくあるのは,本人の判断能力が落ちてしまったために金融機関と取引出来なくなってしまい,入院費などをおろすために早く保全処分を出してもらいたいというケースがありますが,後見開始に反対している親族でもいないのであれば,後見開始の審判を出せばそれほど時間もかからずにお金もおろせるようになるのだからということで保全処分まではなかなか認められにくいようです。



そんなこんなでようやく発令してもらえる保全処分の内容は2つあり,一つは財産管理者の選任であり,もう一つは後見命令(保佐命令,補助命令)と呼ばれるものです。




誤解している人も多いですが,財産管理者が就いたとしても,本人の財産処分権限は全く影響を受けないので,本人も有効に法律行為をすることができます。

ですので,財産管理者として金融機関などを廻って手続する場合に「財産管理者に選任されたので,本人は財産管理することができなくなりました。財産管理権限はすべて私にあります」というい言い方をすると間違いということになります。

ただ,判断能力が低下しているなどの後見等の開始の蓋然性があるという状態を裁判所が認めたわけですので,「本人は判断能力が低下しているわけだから,本人と取引すると後から無効を主張することになるかもしれませんよ」と言って手続を進めていくのが正しい言い回しということになります。



後見命令(保佐命令,補助命令)というのは,財産管理者の選任よりもさらに進んで,本人の行為を後から取り消すことができるというものですので,取消権の先取りということが言えます。

もっとも,後見等の命令を得たとしても,後見人のような広範な代理行為を行うことができるというわけではなく,できることはあくまでも本人の財産の保全行為に限定されます。



時間がかかったとしても保全処分が出されたということは,多くの場合,裁判所としても「審判確定までの間に財産を保全する必要性がある」と認めたということですので,財産管理者に選任された場合には,急ぎ足で金融機関などを廻り,財産を保全(凍結)していくことになります。




そんなに頻繁にお目にかかる手続でもないので,金融機関の担当者も戸惑うことが多く,時間がかかることも多いです。



レアケースだと思いますが,裁判所から「明日保全処分出すので,金融機関を廻ってほしい」と打診の電話がかかってきたこともありますが,翌日時間が空いていなければ金融機関で手続できませんので,時間が空いていないということで断らざるを得なかったということもあります。







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