判例時報2173号で紹介された事例です(東京地裁平成24年10月31日判決)。



本件は医療過誤に属する案件の裁判例で,メソセラピーと呼ばれる脂肪溶解剤を皮膚や皮下脂肪層に注射するという方法での美容施術を受けた患者が,施術後無数の紅い斑点や膨張が発症したとして,医師を訴えたというものです。




患者に現れた斑点の原因や施術に当たっての医師の過失も争われていますが,これについては裁判所は医師の過失により発症したものと認めています。




本件でさらに争点となったのが,医師と患者との間で解決金額を80万円としたうえで,「一切円満に解決したものとし,今後いかなる名目を問わず一切の金銭請求をしない」とした清算条項が入った合意書が締結されていたということでした。医師側は,この合意書により解決済みであるとして争いました。



なお,患者は合意書締結後,当該医師のもとでは症状が改善しなかったことから,他の医療機関に通院するようになりました。




裁判所は,合意書を締結した当時,医師と患者の間では病変の原因が不明であり,症状が治癒傾向にあったとはいえずその後の治療が必要になることが見込まれていたこと,治療に要する期間や費用などは明確ではなかったことなどから,本件合意書は医師に注意義務違反(過失)がある場合にも医師と患者の間の紛争一切を解決するとしたものではなく,患者が当該医師のもとに通院していた期間の損害についてのみ和解の対象とされたものであって,その後患者が別の医療機関に通院した期間の損害の賠償請求権を放棄したものではないと,限定的に解釈しました。




その結果,患者に治療費,休業損害や慰謝料など合計約436万円の損害賠償請求権を認めて医師に支払いを命じました。



このようなケースのリーディングケースとしては,最高裁昭和43年3月15日判決があり,「交通事故による全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて,早急に,小額の賠償金をもつて満足する旨の示談がされた場合においては,示談によつて被害者が放棄した損害賠償請求権は,示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであつて,その当時予想できなかつた再手術や後遺症が後日発生した場合には,被害者はその損害賠償を請求できるものと解すべきである。」とされています。





本件は控訴されているということです。





■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。