養子縁組についてはいろいろな動機でされることがあます。
勿論,子どもを授かれなかった夫婦が幼い子どもを養子として我が子として育てるという親愛の情に基づく本来的な養子縁組もありますが,そのほかにも,主に税金対策の目的で,孫の一人を養子とすることも広く行われており(昔は何人でも養子にしておけば税金対策として有効でしたが,現在では控除を受けられるのは一人のみということらなっています),そこまではまだよいとしても,愛人の女性を養子にして(させられて?)いたりとか,刑事事件になったケースとしては臓器売買で養子縁組を利用したというケースもありましたので,養子縁組の悪用といったことがはびこっているということはあると思います。

ちなみに,過去に情交関係があったとしても財産を相続させ,死後の供養を託すなどの意思があれば縁組は有効に成立するとした判例があります(最高裁昭和46年10月22日)。


この記事では,戸籍を不正に入手するための一つの方法として障がい者による養子縁組が利用されていますが,認知症の高齢者の養子となって相続での財産取得を狙うというのは今でもよく相談が寄せられる類型の一つです。



私が取り扱うことが多い後見の分野では,高齢者の養子縁組に気付いた親族や身寄りがない場合の周囲の人々(社協など)による後見申立てがされ,養子となっている者との間の養子縁組の解消を目的としてなされる後見というのも,数はそれほどには多くはないものの一つの類型となっていると思います。こういった場合,最終的には,後見人が養子縁組無効の法的措置を取るということになります。
後見の分野では,婚姻や離婚,養子縁組といった身分上の行為についてはあくまでも本人の意思に基づきなされるものであり,後見人といえどもタッチできないと説明されることも多いのですが,後見人は本人のために養子縁組無効などの当事者となることができるのです。


せっかく後見人が養子縁組無効の訴訟等の法的手続をとっても,当の養親である高齢者本人が死亡してしまうと(養親とされた者が高齢者であることが多いのでこういった事例も決して珍しいことではありません),訴訟手続は終了し,誰かに手続が承継されるということはありません(最高裁昭和57年11月26日)。
相手方である養子とされる者がいなければ相続人となるべき者(例えば,死亡した高齢者の兄弟姉妹やその代襲相続人)が改めて自らの相続権を主張して養子縁組無効等の法的手続をとるということになります。


その養子とされている者がいなかったとしても相続人が全くいないようなケースではどうなるのでしょうか。


この場合でも後見人が提起した養子縁組無効等の手続は終了してしまい,その後,例えば相続財産管理人がその訴訟を引き継ぐといったことはありません。そもそも,戸籍上は相続人である養子がいるので,相続人の存否が不明な場合に選任される相続財産管理人が選任される余地がありません。


インチキな養子縁組をやった養子とされている者が利益を受けるのはおかしいと思うので,公益的な正義の味方である検察官が原告になって手続が出来ればよいようにも思いますが,検察官は養子縁組に関しては手続を申し立てることができる者とされていません。



そうすると,相続人がいない人の場合には,誰もそのような養子縁組に対して異議を唱えることができる人がいないということになり,少しおかしいと思います。


養子縁組について悪用がされているといった実態(立法事実)があるのであれば,縁組に当たっては裁判所を手続的に関与をさせるとか,不正な縁組に関しては検察官を申立権者として縁組の無効等を主張できるようにするなど,一定の改正が必要なのではないかと思われます。


現状の対策としては,ほかに相続人がいないようなケースで,後見人として養子縁組無効等の手続をとった場合に,手続中に本人に死なれてしまっては悔しいので,本人に「その養子ではない別の人に相続させたい」という意思があるのであれば,その旨の遺言を作成しておき,仮に手続中に亡くなった場合には,遺言に沿って相続を発生させ,相続権についての争いは後に残った相続権を主張する者同士に託す,ということくらいでしょうか。ただ,後見とはいえしっかりとした本人の遺言意思というものが必要になります。






■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。