判例時報2185号で紹介された事例です(東京地裁平成24年12月27日)。




平成20年、原告が土地を購入してアパートを建てようとしたところ、建築を請け負った業者から「自販機を設置して課税売上を発生させれば工事代金で支払った消費税の還付を受けられる方法がある」とアドバイスがあり、税理士を紹介されました。




当時の消費税法では、原告にそもそも課税売上がない場合には、本件建物が完成する平成21年3月までに自販機を設置して飲料水の販売を行う事業者となった上で消費税課税事業者選択届を提出するなどすれば、工事代金の消費税の還付を受けられるという方法が可能だったということです。




ただ、原告にすでに課税売上がある場合には、通常通りその年(平成20年)のうちに届出しなければ工事代金の消費税の還付を受けられないということになっていました。



原告は、平成21年に入ってから届出を行って、つまり、前者の方法により消費税の還付を受けましたが、その後の税務調査によって既に課税売上があったとして、平成20年中に届出をしていなかったとして更正処分、過少申告加算税の賦課処分を受けてしまいました。



本件で、税理士は原告に対して課税売上がないかどうか確認したところまではよかったのですが、確認不足であったとして、裁判所は税理士の注意義務違反を認めて、総額約836万円の損害賠償を命じています。




原告は自宅として使用していた物件を、妻が代表を務める会社に使用させており、その会社の決算報告書には会社から原告に賃料が支払われているという記載があり、原告は税理士に対して会社を実質的に経営しているのは原告であることまでは告げていましたが、それはあくまでも原告が支払った賃料の立て替え払いを受けているものであるという認識から、税理士に対して「他に収入はない」と回答していました。




裁判所は、当該税理士がその会社の税務代理業務についても委任を受けており当該賃料の経理データについても受領していたことなどから、きちんと調べていれば原告に当時課税売上があったということは容易にわかったはずであるが、わずかに一度原告に対して確認したのみであったとして、税理士には適切な税務申告をしなかったことについて過失があったとされました。




税理士が損害賠償を命じられた損害としては、余分に支払わざるを得なくなった税金分や弁護士費用です。





本件は控訴されているということです。










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