【さいたま市で近所に住む女性を包丁で刺して殺害しようとしたとして逮捕された61歳の男が、事件の当日に警察署を訪れ、「女性を殺してしまうかもしれない」と話していたにもかかわらず、警察が危険性はないと判断して、親族に引き渡していたことが分かりました。
警察は被害者の家族に謝罪するとともに、対応に問題がなかったか検証することにしています。

今月6日、さいたま市西区で60歳の女性が背中を包丁で刺されて大けがをし、埼玉県警の大宮西警察署は近くの無職、●●容疑者(61)を殺人未遂の疑いで逮捕しました。
●●容疑者は調べに対し「女性から電波攻撃を受けた」などと供述していましたが、事件の4時間前にも大宮西警察署を訪れ、同じ内容の話をしたうえで「女性を殺してしまうかもしれない」などと話していたことが、警察への取材で分かりました。
これに対し、対応に当たった警察官は、態度が比較的落ち着いていたことから危険性はないと判断し、そのまま親族に引き渡したということです。
警察は11日、被害者の家族に謝罪するとともに、内部に委員会を設けて対応に問題がなかったか検証することにしています。
埼玉県警察本部の佐伯保忠生活安全企画課長は「結果的に事件を防げず、被害者や家族にお見舞い申し上げます。被害者の安全を図るために、今後どう対応すべきなのかを検討し、再発防止を図りたい」と話しています。】(本日配信のNHKオンラインの記事から引用)




上記のようなニュースが報じられていますが,事前に警察を訪ねた際に「電波攻撃を受けている」などの発言があったようで,記事のとおりであるとすると被疑者には精神障がいがあるものと考えられます。




警察の怠慢だということで批判するのは簡単なのですが,弁護士もいろいろな相談を受けている中で,精神障がいがあると考えられる人からの相談もあるので,そのことを踏まえると,なかなかそう一概には言い切れないようにも思います。




法律相談などで弁護士が相談を受ける際にも,「電波で攻撃されている」とか「CIAから狙われている」といった内容の被害を訴える場合があります(「電波系の相談」などといったりすることもあるようです)。




家族から困っているという相談であれば家族の立場に立って精神病院へ入院させるための方策を考えるなどアドバイスの仕様もありますが,本人からの相談の場合,「CIAに内容証明を送りましょう」というわけにもゆきませんから,残念ながら,対処のしようがありません。

お話を聞くだけ聞いてお引き取り願うしかありません。





本件の警察官も「電波系の相談」ということで,お話を聞くだけ聞いてお引き取り願ったということなのだと思うのですが,警察官の場合,精神障害者が自傷他害する恐れがある場合に,本人を守り,社会の治安の維持するという職務があります。




一般的に考えられるのは,精神保健福祉法に基づく措置入院(強制入院)をさせるという手続ですが,警察に相談訪れた人を強制入院させてしまうということはなかなか警察としても措置しずらいでしょう。




また,「登下校中の小学生をにやにやと見ている」とか「奇声を発して周囲を威嚇している」など,それ自体が犯罪とはならないとしても,その地域で精神障害者の言動が恒常的に問題となっており,警察に「何とかしてほしい」ということで相談が寄せられているという場合もあります。





こういうケースでも,警察としてはパトロールの強化程度はしてくれるのでしょうが,措置入院のために積極的に動くということはないようです。

私が良く耳にするのは「警察に措置入院の検討を依頼したが,むかし,警察が措置入院させたところ訴えられて負けたケースがあり,慎重にならざるを得ないと言われた」という話です。




真偽不明ですが,警察としては,犯罪行為に達しない限り,なかなか動けないというのが実情のようです。




精神障がいがみられるから片っ端から警察が介入して措置入院させろというのは乱暴であるとしても,役所,警察,医師,弁護士などが連携して,行き過ぎにならないように,オープンに自傷他害の恐れがあるケースについては対応するという仕組み造りが必要なのではないかと思います。



■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。