判例時報2176号で紹介された事例です(東京地裁平成24年10月16日)。




価額10億円超の遺産を残して死亡した被相続人(大正5年生まれ)が,病院で死亡する3日前に節税対策として,3億円の年金保険契約を締結しました。その際に立ち会ったのは,相続人の一人であったAと証券会社の社員でした。契約書への署名はAが代筆したということです。




相続税申告の依頼を受けた税理士は,Aから保険会社からの支払調書などの提出を受けて申告を行いましたが,約8か月後に税務調査が入りました。




税務調査の際にAは調査官から「保険契約は被相続人の意思に基づいたものか」という質問をうけ「母も喜んでいました」などと回答し,税務当局も当初はこの点を問題視していなかったようですが,翌年になって調査官が交替し(ずいぶんと長い調査です),被相続人が入院していた病院からカルテなどを取り寄せて分析したところ,保険契約は被相続人の意思に基づかない無効のものであるとして,保険契約を否認するということになりました。




認定によると,被相続人は,契約日当日にはとても契約について理解できるような状態ではなかったということです。




Aは初めは税務当局と争う姿勢を示していましたが,結局,税務当局の指摘を受け入れて,重加算税などを余分に支払うということになりました。






この余分に支払うこととなった税金は,税理士がきちんと調査して申告しなかったからだということで,相続人の一人が約1738万円の損害賠償を求めて提起したのが本件です。






裁判所は,10億円超の遺産を有していた被相続人が3億円の保険契約を締結したとしてもそれほど不自然なことではないこと,契約の3日後に死亡していたとしてもそれほど不自然であるともいえないこと,Aが税理士に説明していたところでは被相続人も契約できて喜んでいたということであったことや,税当局が被相続人の意思無能力に気付くことができたのは病院からカルテを取り寄せたからであり税理士にはそこまでの調査権限はない以上,税理士が,保険契約の締結が無効であったことに気が付かず,そのまま税務申告をしたとしても,債務不履行はないとして,相続人の請求を棄却しました。





なお,本件は控訴されています。




税理士さんの責任というより,その場に社員が居合わせて,契約書類を代筆させているような証券会社の方が問題だという気がするのですが。。。






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