原本と正本と謄本と抄本

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公的文書,特に裁判所の判決や決定には,原本,正本,謄本,さらに抄本という区別があります。



原本というのは,この世に一つしかない書類そのもののことで,判決であれば,裁判官の署名押印が直接してあるというものです。




抄本は,原本の記載の一部のみを記載した書類のことで,家事調停などでよく用いられます。

例えば,離婚の件の調停調書そのものには,財産の内容や分け方とか,場合によっては暴力や不貞行為についての謝罪条項とか慰謝料の金額とかが書いてあったりするのですが,役所に出す離婚届に添付するのははばかられるので,離婚届出用には,離婚の届出の受理に必要な範囲についてのみの記載がされている調停調書の抄本を発行してもらい,それを使用するということになります。




よく分らないのは正本と謄本の違いです。




理屈としては,正本は「原本と同じ効力をもつもの」,謄本は「原本の写し(コピー)」ということなのですが,実際上は,単に「これは正本(謄本)である」とゴム印がされていて,書記官がきちんと記名押印しているわけなので,記載上,大した違いがあるわけでもありません。




ただ,正本をもらうか,謄本をもらうかは大違いで,正本はそれを使用することで強制執行することができますが,謄本はできません。

また,強制執行するためには,「正本」が相手方に送達されていることが条件になり,「謄本」が送達されていても,強制執行することはできません。




民事裁判の判決書は必ず「正本」が相手方に送達され,自分も「正本」を受け取るので問題はないのですが,家事事件の調停調書などでは,「謄本」しか発行されていないことがあります(というか,何も言わなければ通常「謄本」になります。なぜかは知りません。書記官に「謄本ではなくて,正本お願いします」というとなんだか嫌がられるような雰囲気です,手続的に面倒くさいのでしょうか。)。




謄本の場合,相手方が約束の履行を怠り,いざ,強制執行しようと思っても,改めて「正本」の交付申請と相手方に対する送達申請の手続をしなければなりません。




長期の分割支払の約束で調停が成立した場合に,数年経過した後に不履行があり,強制執行をするという段になって「謄本」しか発行されていなかったということに気づくと青くなることがあります。

その段になって「正本」が送達されてくるわけですから,「今から強制執行しますよ」ということを相手方に教えてあげているようなものだからです。





ですので,調停調書は必ず「正本」を発行(交付)してもらって,それを相手方に送達してもらうように書記官に確認した方が良いということになります。







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