成年後見を務めていた本人が死亡すると,その時点で成年後見人の地位,権限は消滅します。
そして,相続人がいる場合には,相続人に対して財産目録を作成提出し,保管していた財産を引き渡すということになります。
相続人がいないケースというのもあります。
この場合には,遺言がなければ,原則として,元後見人が相続財産管理人の選任を申し立てて,家裁が選任した相続財産管理人に財産を引き渡します。
「原則として」といったのは,相続財産が僅少な場合や債務しか残っていないような場合には,申し立てる実益がないので,申し立てることなくそのままということになります。
ちなみに遺言があれば遺言執行者に相続財産を引き渡すことになりますが,ある特定の遺産についての執行権限しかないな場合には,その他の遺産については相続財産管理人の選任の申立が必要ということになります。さらにちなみに,この場合,遺言執行者と相続財産管理人が並立することになりますが,その権限関係はどうなるのかというマニアックな論点もあります。
プラスの相続財産が少ししかないような場合には,家裁としても後見人の最後の報酬として清算させるということになるのではないかなと思います。
相続財産管理人の選任を申し立てる場合に,十分な流動資産の額の相続財産があって,その中から相続財産管理人の報酬が差し引ける場合には,特に予納金を納付する必要はありません。
しかし,相続財産が不動産しかないとか相続財産の中から報酬がねん出できないような場合には,申立人が予納金を納付しなければならず,東京家裁の場合には50万円から100万円程度とされています。
もっとも,元後見人が予納金を自腹で納付してまで相続財産管理人の選任申立てをする義務まではないので,こういった場合には,申立はされず放置ということになります。
社会福祉士さんなどと話していると,このような状態になってしまうことは結構気に病む人も多いのですが,あまり重く考えなくて良いと思います。
そうすると,不動産の場合ですと,いつまでも亡くなった本人の所有名義のままになっているということになりますが,時が経ち,誰か(例えば開発会社など)がその土地を取得したいと思った際には,その人が予納金を負担して相続財産管理人を選任してもらって,契約や手続をするということになるのでしょう。
額が多くない預貯金の場合には,銀行に休眠口座としていつまでも残り続け,何らかの立法的な手当でもされた場合には(銀行は基本的には預金債権の消滅時効の援用はしませんので,東日本大震災の際の財源として休眠口座が検討されたように,立法的措置がないといつまでも残り続けるということになります),消滅するということになるのでしょう。
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