判例時報2171号で紹介された事例です(東京地裁平成24年7月19日)。



東証1部に上場している鉄鋼製品等の製造販売等を行っている株式会社の定時株主総会でなされた株主からの質問に対して代表取締役が説明をしなかったとして,総会で可決された決議について法令違反又は著しく不公正であるとして取消訴訟が提起されたという事案です。



総会で実際になされた質問の内容は,被告会社のA工場で不法投棄がされているということを前提として役員の責任などについて問うというものでした。




これに対して,代表取締役は,産廃物の撤去に関して権限のある地元市町からの回答(直ちに産廃処理法に抵触するとは判断できない,今後の対策として定期的な水質検査を行うことを求められたことなど)を踏まえて不法投棄であることについて否定し,不法投棄であることを前提とする役員の責任等に関する質問については回答しませんでした。




裁判所は,取締役の説明義務が果たされたかどうかという点について,決議事項の内容,株主の質問事項と当該決議事項との関連性,程度,質問がされるまでに行われた説明の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて,質問株主が保有する資料等の総合的に考慮して,平均的な株主が議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行いえる程度の説明をしたかという基準に照らして,本件では,説明義務違反は存在しないとしました。




ただ,代表取締役の説明については,不法投棄に当たらないことの根拠や廃棄物の投棄状況等の前提となる事実関係を明らかにしていない点で,いささか不十分ではある,とも指摘されていることにも注意すべきでしょう。





また,別の株主は,総会で実際に質問するのではなく,総会前に,B工場についての不法投棄に関する質問を記載した事前質問状を送付していましたが,裁判所は,総会で実際に質問されていない以上,取締役には説明義務はないとしています。この点については一般的な判例(最高裁昭和61年9月25日など),通説です。




本件は株主の訴えは棄却され,そのまま確定しています。






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