判例時報2169号で紹介された事例です(東京地裁平成24年6月8日)。



ある建築会社が別の工務店に対して建物の建築を依頼し,建物が完成しました。平成3年のことでした。



建築会社は建物を一般顧客に販売しましたが,その後,建物所有者が亡くなったため,その相続人は本件建物を,2850万円で売却しました。

この時本件建物を購入した買主(原告)が,建物が傾いているとして,売主(被告売主)の瑕疵担保責任(民法570条)に基づいて,売買契約の解除や損害賠償を求めて提訴したのが本件です。

また,原告は,本件建物を建てた建託会社(被告建築会社)についても,きちんとした建物を建てなかったとして不法行為に基づいて損害賠償の請求をしました。




裁判所は,本件建物の傾斜(西側北端部分12.9/1000程度西方向に傾斜,南側東端部分は8.3/1000程度南方向に傾斜)は,国土交通所の基準などに照らしても受忍限度を超えるものとし,本件建物は通常有すべき性質を欠いた「瑕疵」があるとしました。

また,その原因としては,土地の地盤と建物の基礎工法に欠陥があり,「瑕疵」は原告と被告売主の売買契約の以前から存在していたものであるが,そのことを素人である原告としては知ることはできないから,「瑕疵」については「隠れた」(=つまり原告としては知らなかった)ものであるとも認定しました。




売買対象物に「隠れた」「瑕疵」があれば,売主の過失を問うことなく責任が認められるのが瑕疵担保責任ですが,責任追及の方法として,①契約の目的自体を達することができない場合には契約自体を解除すること(支払った売買代金を返してもらう)②損害賠償のいずれか又は両方が認められますが,本件では,解除までしなくても補修が可能であるとして,売買契約の解除までは認めませんでした。



なお,瑕疵担保責任を追及できるのは,買主が瑕疵の存在を知ってから1年以内と短いのですが,被告売主側は,この点を主張しました。

しかし,裁判所は,原告が具体的に瑕疵を知った時点としては,建物の傾きを感じるようになった時点ではなく,一級建築士に依頼して建物の傾斜の程度などを具体的に知った時点であるとして,本件では責任追及の期間は経過していないとしました。




認められた損害としては,専門家に依頼した建物や地盤,補修方法について調査費用(約102万円),補修費用相当額(約1830万円),弁護士費用などです。なお,補修方法に関しては,本件ではアイリフトという工法ではなく,ジャッキアップという方法の方がより適切であるとして,本件ではそちらの工法での補修費用を認めています。

建築士に対する相談会参加費用や被告側の調査に原告側建築士を立ち合わせた際の費用,弁護士に依頼した内容証明の作成費用,慰謝料については認められませんでした。




また,もともと本件建物を建築した被告建築会社の責任ついては,自分で建築したのではなく,別の工務店に発注したことや,本件土地の地盤調査として,現在では必須とされているコンシステンシー試験,圧密試験,せん断試験がされていなかったとしても,平成3年当時では一般的に行われていたとは認めがたいといったことから,責任を否定しています。




本件は確定しているということです。










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