判例時報2169号で紹介された事例です(東京地裁平成24年9月20日)。




美容整形手術として脂肪吸引手術を受けた患者が,手術翌日に心肺停止となり,一命は取り留めたものの,身体障害者一級の後遺障害を負ったとして執刀医に対して約1億円の損害賠償を請求したという事案です。




患者側は,執刀医の手技上のミスと説明義務違反の二つを理由として請求しましたが,手術記録の記載などから,手技上のミスについては認められませんでした(この件に限らず,手技上のミスが認められるということはなかなかないようです)。



そして,執刀医が,脂肪吸引手術に伴い死亡や重大な合併症を生じさせる可能性があることを説明しなかったことについてが主な争点となりました。




この点,執刀医側は,症例が極端に低いことなどからそもそも説明すべき義務はないと主張しましたが,裁判所は,脂肪吸引手術に伴い死亡や重大な合併症を生じさせる可能性があることは,患者が手術を受けるかどうかを選択するための重要な情報になるとして,説明すべき義務があるとしました。

もっとも,その説明としては,統計的な調査データなどもないことから,具体的な数値を示すことはできず,「きわめて稀に死亡ないしは重度後遺障害が生じる場合がある」という程度の説明で足りるとしています。




そして,本件では,仮に,そのような説明をされていたとして,患者が脂肪吸引手術をしていなかったかどうかということに関して,本件患者が過去に2回他院で脂肪吸引手術を受けたことがあったことなどから,そのような説明を受けたとしても手術はしていたであろうとして,説明義務違反と後遺障害によって生じた損害との間に因果関係がないとされました。

まあ,患者としても,美容整形の施術という程度の認識でしょうし,「きわめて稀」な症例を説明されたとしても「自分は大丈夫だろう」と思ってしまうというところでしょうか。




そして,患者が受けた損害としては適切な説明を受けられず自己決定権を侵害されたことによる慰謝料の範囲にとどまるとして220万円のみ認められました。




本件は控訴されているようです。


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