判例タイムズ1383号で紹介された福岡高裁の判決例です(平成24年3月13日判決)。




ある不動産の所有者A(87歳の女性)が,宅建業者に売却の相談をしたところ,1500万円で値付けてして売却先を探すということになりました。媒介契約は締結されなかったようです。




ところが,この宅建業者は,転売先としてAの隣地のBを見つけてきたのですが,媒介するのではなく,Aから不動産を1500万円で買い受けたうえで,同日,Bに対して2100万円で売却するという行為に出ました。




AB間の売買契約を媒介しただけであれば,最高でも72万4500円の媒介報酬しか得られなかったところ,自ら売買することで,600万円の差額利益を手にしたことになります。




この宅建業者の行為について,裁判所は,宅建業者が媒介ではなく,顧客との売買契約により取引を行う場合には,それが合理的であること(顧客にとってメリットがあること)を必要とするとして,本件では,売買契約がAの意思に反していたとはいえないものの,媒介ではなく,売買契約による合理性が認められないとしました。




宅建業者側は,売買契約によって素早く取引できたと主張しましたが,Aが売却の意向を示してから半年以上経過しており媒介に寄らなかったよりも素早く売却出来たとはいえないとしました。

また,即金一括払いで解約などのリスクがなくAにとって確実に売却できたということも主張しましたが,売買契約が解消されるリスクは残されていたとしました。

また,売却後の紛争に巻き込まれるリスクが少ないということ宅建業者側から主張されましたが,Aの瑕疵担保責任を免除するなどの規定は含まれておらず,宅建業者と売買契約をしたことによるメリットがあったとはいえないと判断されています。




裁判所は,差額利益600万円は本来であればAが得られていたであろうとしつつ,媒介によっていたならば宅建業者に支払っていたであろう仲介手数料を差し引いた527万5500円を限度として宅建業者の責任を認めました。




本件は上告等がされているようです。






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