判例時報2168号で紹介された東京高裁平成24年10月24日の判決例です。




消費者事件などでは,悪用された電話番号について,通信会社に対して契約者の情報の開示を求めて,住所などの情報を入手し,内容証明を送ったり,訴訟提起したりということをすることがあります。




訴訟提起前に,弁護士会照会という弁護士法で認められている手段によって回答してくる通信会社もあれば,弁護士会照会には回答しないというところもあります。




本件では白い犬の携帯電話会社が,架空ファンドへの出資を募っていたという案件で当事者が使っていた携帯電話の契約者情報について,裁判所からの調査嘱託に対しても回答しなかったとして,原告が,携帯電話会社を被告して,不法行為に基づく損害賠償や回答義務の確認を求めたという訴訟です。




原告が提起したもともとの訴訟は,架空ファンドの投資に関与した者に対する損害賠償請求訴訟でしたが,その者の住所等が不明であったことから,住所不明として訴訟提起した上で(住所不明であっても訴訴訟としては受理されるのです),訴状等の送達のためにということで,裁判所から携帯電話会社に対して,その住所や氏名,請求書の送付先,連絡先電話番号,料金の支払い方法などについての調査嘱託を申し立て,裁判所はその必要ありと認めて,携帯電話会社に対して調査を嘱託しました。




調査嘱託というのは,民訴法186条に規定されているもので,嘱託を受けた者は原則として回答義務を負うということについてはほぼ異論がないとされています。




しかし,携帯電話会社は通信事業者としての守秘義務を理由として回答を一切拒否しました。



結局,この訴訟自体は,公示送達という方法によって終結したといことですが,被告の住所等が分らないので,判決書は紙切れ同前ということになります。




そこで,原告が,携帯電話会社に対して,裁判所からの回答拒否が不法行為に当たるとして訴訟提起したのが本件です。損害としては住所を把握できないことによる損害10万円,慰謝料10万円,調査嘱託費用1000円の合計20万1000円の支払いを求めました。




一審の東京地裁では,本件の嘱託事項については,携帯電話会社の裁判所による調査嘱託は電気通信事業法上の通信に関して知り得た他人の秘密に該当するとし,携帯電話会社には守秘義務があるとしました。




そして,嘱託事項のうち料金の支払い方法については守秘義務が優先するが,その他の事項については回答義務が優先すると判断しました。




しかし,その回答拒否が不法行為となる余地はないとしました。回答義務は,国(裁判所)に対して負っているもので,原告に対して負っているものではないからという理屈です。




これに対して,高裁では,回答拒否が不法行為となる余地もあるとしました。




ただ,本件の解決としては,調査嘱託には嘱託の目的の記載がなかったので,携帯電話会社としては回答してよいかどうか判断がつかなかったとして,回答義務に違反したことについての故意,過失がなかったとして請求を棄却としました。

お,回答義務があったことの確認請求については,そのような訴訟は認められないとして訴え却下としています。




本件は確定しています。




通信会社に対する情報の開示を求めるということは,通信の秘密という憲法上の権利にも関わることですし難しいところでなのたろうとは思いますが(本件嘱託事項については憲法上の通信の秘密には該当しないとされていますが),裁判所からの問い合わせや命令が無視される,執行できないというのは,本当に困ったことです。

少し外れますが,裁判所の判決があっても,被告の財産状況が分らないから執行できない,財産開示という手続も実質的に機能しないという現在の状況は本当にもっと改善していかなければならないと思います。






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