弁護士は多重債務者の案件を複数抱えている場合に,同一の業者に対してある債務者は過払いが発生し(この場合は債務者というよりは債権者になりますが),ある債務者は債務が残ったままという場合に,依頼者同士で債権債務を相殺したり,買い取ってもらうなどするというようなことが行われたりすることもあるようです。

また,同じ弁護士(代理人)というわけではなく,別々の弁護士が,上記のような処理をすることもあるようです。

Aという弁護士がある業者に対して過払の確定勝訴の判決を得たが,業者がなかなか支払ってくれないので,Bという弁護士が依頼を受けている同じ業者に債務を抱えている方に過払金債権を買い取ってもらって,Bは買い取った過払い金債権と債務を相殺して業者からの取立て,支払いを免れるというわけです。ただ,過払い金を買い取る方(債務者)としては,債務額を超える過払い金全額を買い取るメリットはないので,買い取る金額としては債務額を上限にディスカウントするということになります。過払い金を売却する方としては,ディスカウントしてでも手元にお金が回収できた方が良いというメリットがあります。

ただ,このような方法は,十分に気をつけてやらないと,同じ弁護士が自分の依頼人同士で行うと利益相反になったり,別の弁護士同士であっても依頼人の同意を十分に得ないと危険であると言われています。



本件は,判例タイムズ1380号で紹介された事例です(東京地裁平成23年7月20日)。




ある弁護士のもとに,(弁護士業界ではだかつのごとく嫌われていた)ある消費者金融業者に過払金が生じる依頼人と債務が残ったままになっていた依頼人がいました。



過払い金については返還訴訟を提起しましたが,その審理期間中に,業者から弁済がされました。

なお,この弁済は,業者に対して債権者破産が申し立てられ,業者側が破産を避けるために,破産申立の代理人弁護士に対して一括して支払われた後,その後,2回に分けて,各過払債権者の代理人弁護士らに対して送金されています。



その後,業者に対して過払い金の返還を命じる判決が出されて確定しますが,確定までの間,業者は弁済したという事実を裁判所に対して主張しませんでした。




そして,債務が残っていた依頼人について,業者からの支払いを免れるため,弁護士は,前記の過払い金の確定勝訴判決に基づいて,債務が残っていた依頼人についての業者の貸金債権に対して転付命令を得ました。

転付命令というのは,差押えのもっと強力なもので,他の債権者が差押えをしてきたとしても按分で分け合うということにはならず,転付命令によって,差し押さえた債権を単独で確定的に取得することができます。ただ,転付命令によって得た債権に資力がないなどのため回収できなかったとしても救済されないことになっています。




過払債権者は,転付命令によって債務が残っていた債務者の貸金債権を手に入れ,債務者は残っていた債務を弁済してチャラとしました。





業者は,弁済したのにもかかわらず強制執行したのは不当利得,不法行為に当たるとして提訴しましたが,裁判所はどちらも認めませんでした。




まず,弁済の事実は,過払い金返還訴訟の審理中に主張できたのに主張したなかったのだから,いまさら主張できないとしました。




さらに,弁済を受けたにも拘わらず強制執行した点については,本件は弁護士主導のもと,二重に利益を得るために行われたものではなく多重債務の解消の方策として行われたことなどから不法行為にもならないとされました。




もっとも,これは,訴訟の当事者となっている過払金の債権者(素人)について指摘しているものであり,代理人である弁護士のやり方としては社会的相当性を欠くと指摘されており,リスキーなやり方であったということは言えるかもしれません。




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