昨日,次のようなニュースが報じられました。



【盗品等有償譲り受け罪に問われ、1審で懲役刑と罰金刑を言い渡された男(68)の控訴審判決で、東京高裁の小川正持裁判長は8日、罰金が支払えない場合の労役場への留置期間を告げなかったのは「法令適用の誤り」として1審の長野地裁松本支部判決を破棄した。

 その上で1審と同じ懲役1年8月、罰金20万円を言い渡し、罰金を納付できない場合は5千円を1日と換算して労役場に留置すると宣告した。】(産経新聞オンラインから一部引用)




まず,裁判所が被告人を罰金刑に処するときは,併せて,罰金を払わなかった場合に労役場に留置する期間を定めて言い渡さなければならないとされています(刑法18条4項)。

1日当たり5000円とする例が多く,20万円の罰金であれば,全額支払えなかった場合には40日の労役場留置となるということです。




一審裁判所は,この労役場留置の言い渡しを宣告し忘れたということで,このことは,法令違反という控訴理由になります(刑訴法380条)。

法令違反があっても,判決に影響を与えることが明らかな場合でなければ,一審判決は破棄されませんが,本件の場合には,明らかに判決に影響を与えますので,破棄されたということになります。




そして,控訴審は,破棄したうえで,1審と同じ懲役1年8月、罰金20万円(1日5000円での労役場留置)を言い渡しているので,「一審と同じなら意味ないじゃん」と思うかもしれませんが,被告人が控訴した場合に控訴審が一審判決を破棄した場合には,控訴期間中の未決勾留日数は全部算入されることになるので,被告人にとっては有利なのです(刑訴法495条2項2号)。




未決勾留日数の算入というのは,刑務所に服役する期間からその分を差し引いてくれるということです。

懲役1年8か月で,未決勾留日数の算入が60日であれば,実際の服役期間は1年6か月程度まで減るということになります。




通常,控訴審の審理期間は3~4か月程度かかりますが,その間身柄拘束されている場合,控訴棄却の場合には,半分程度が算入されるのが普通ですので,算入されなかった分については,被告人としては無駄な身柄拘束だったということになります。控訴期間中の勾留期間が長いほど,被告人にとっての有利不利が変わってくることになります。




このことから,相談を受けて控訴するかどうか決めるという場合,控訴審で破棄される可能性がどの程度あるのかということに頭を悩ませることもあります。

結局のところ,弁護人は担当裁判官ではないのでそんなことは分らないのですが。




しかし,それでも控訴した場合には,とにかく何でもよいので破棄してもらうべくいろいろな主張をすることになります。




重箱の隅をつつくような条文操作の誤りを指摘したりすることもあります。




たまにあるのは,控訴審としても「一審判決がちょっと重いかな」と考えた場合に,2か月程度を量刑不当で破棄してくれて,控訴期間の全部算入と合わせると,被告人にとって有利になるという助け舟をしてくれることがあります。もっとも,量刑不当といっても,一審判決後の事情を考慮した上での破棄ということが普通ですので,控訴審の弁護人としては,一審判決後に生じた被告人に有利な事情を主張しなければなれりません(端的には一審判決後の弁償の支払いや示談の成立などがあります)。






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