武富士は平成22年10月31日に会社更生法の手続が開始され,顧客に生じていた過払金についてはスズメの涙程度の弁済しかできないということでちょん切られてしまい,会社自体はスポンサー企業となった株式会社日本保証(旧ロプロ)に売却されるということになりました。




しかし,法人である武富士からの回収はできないとしても,元の創業者一族である代表取締役(創業者利益を享受し,莫大な個人資産を保有したままになっている)に対して責任追及を行うため,弁護団による又は個々の訴訟が全国で提起されています。




判例時報2162号で紹介された横浜地裁平成24年7月17日は,元の代表取締役に対して,不法行為責任を認めた事例です。



貸金業者による貸金の請求や弁済受領行為について,不法行為責任が成立するかという点については,平成21年9月4日の最高裁判決があり,貸金業者が暴行や脅迫をもって貸金を取り立てたり,貸金業者が貸金債権について法的根拠を欠くことを知りながら,又は,そのことを容易に知り得たのに敢えて貸金請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合は不法行為になるとしています。



貸金業者については過払金が発生しているのにも関わらず,貸金の請求をするということは問題ではないかという問題意識で,貸金請求したり弁済を請けたりすること自体が違法ではないかという観点から,このような裁判がいくつか提起されたのですが,過払金については,一連の最高裁判決が出るまでは,解釈が定まっていないところもありましたので,「確実に過払金が生じていたかは分らない(貸金債権に法的根拠がなかったとはいえない)」という論理で,貸金業者について不法行為が成立するとまでは判断したものは多くはありませんでした。



今回の横浜地裁の判決では,上記の平成21年の最高裁判決の基準は,貸金業者(武富士)のみならず,その代表取締役にも当てはまるとしました。

そこで,貸金業者(代表取締役)が貸金債権について法的根拠を欠くことを知りながら,又は,そのことを容易に知り得たのに敢えて貸金請求をしたと言えるかがポイントになりました。




この点,平成18年1月13日の最高裁判決によって,貸金業者にみなし弁済が認められる余地はなくなったのですが,武富士はこれを受けて平成18年6月30日に関東財務局に対し,「弁済が認められるための要件を欠いていた。事業リスクが生じる。」などと記載した有価証券報告書を提出していました。



そこで,裁判所は,少なくとも,この有価証券報告書を提出した平成18年6月30日には武富士(代表取締役)には過払金が生じているかどうかの確認をすることが求められており,そのための計算は4か月あれば十分できたはずであるから,「平成18年1月13日の最高裁判決以降に武富士からの借入がなかった顧客」について過払金が生じていた場合に,その顧客に対して,平成18年10月30日以降「貸金」を請求したり弁済金を受領する行為は,「貸金業者(代表取締役)が貸金債権について法的根拠を欠くことを知りながら,又は,そのことを容易に知り得たのに敢えて貸金請求をしたと言える」としました。




「平成18年1月13日の最高裁判決以降に武富士からの借入があった顧客」については,その時点で生じていた過払金が,それ以降借り入れた貸金債務に充当されるかどうかについて争いがあり,確実に,「貸金業者(代表取締役)が貸金債権について法的根拠を欠くことを知りながら,又は,そのことを容易に知り得たのに敢えて貸金請求をしたと言える」かどうかまでは分らないとしました。




そこで,この点について決着をつけた平成19年6月7日の判決が出た4か月後には引き直し計算が可能で,顧客に過払い金が生じていたかどうかが分かったはずであるとして,「平成18年1月13日の最高裁判決以降に武富士からの借入があった顧客」については,平成19年10月7日以降「貸金」を請求し弁済金を受領する行為は不法行為になるとしました。




顧客に生じた「損害」としては,武富士に対して払わなくてもよいのに支払った金額であるとして,上記の基準,期間に当てはまる顧客に対して支払った弁済額と同額の損害賠償をするように元代表取締役に命じました。




本件は控訴されています。


(後日の報道によると東京高裁で一審判決は取り消されてしまったようです)








■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村


■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。