判例時報2162号で紹介された東京地裁平成24年7月26日の裁判例です。



私が司法試験の勉強をしていたころの民法の基本書にやたらと「クリムトの絵」が例として引かれていたことがありましたが,本件で問題となったのは,古伊万里の陶磁器,ルノワールと藤田嗣治の絵画です。



原告は昭和14年生まれで長く会社を経営しており,美術品の収集家でしたが,美術品取引に関しては一般人でした。

原告は,平成19年頃に,美術商を営む被告会社の代表者(40年以上美術取引に関わってきたということです)と知り合い,その後,被告会社から,上記の陶磁器や絵画を,順次,購入しました。



しかし,その後,購入した品々が,贋作であったことが判明したとして,被告会社と代表者を相手取って,合計約4560万円の支払いを求めて提訴しました。



本件では陶磁器については古伊万里ではなかったことについて争いはありませんでしたが,ルノワールなどの絵画についてはその真贋に争いがありました。



美術品の真贋が争点になっている場合,裁判所が真贋を判定するのかということになりそうですが,そもそも,裁判所は美術品についての審美眼があるわけではなく,それも難しそうです。




そこで,本件では,被告代表者が,陶磁器や絵画の前の所有者が,美術品の世界では有名なコレクターであったと匂わせて売っていたことに着目しました。

美術品の真贋はともかく,素人が美術品を買うという場合,その前の所有者が美術品の世界で有名なコレクターであれば,信用して買うであろうから,そのことについてきちんとした情報を告げなかった場合には,買主を錯誤に陥らせたものとして契約が無効になると指摘しました。




また,真贋が争点になって絵画に関しては,売買当時の美術品取引の世界では,藤田嗣治の絵画については東京美術倶楽部というところの鑑定書,ルノワールについてはウィルデンスタインというところが発行するカタログレゾネという書籍に掲載予定の作品であることが求められていたのが一般的であったとして,本件ではいずれの条件も満たされていないのに,原告にそのことを告げなかったことは売主としての注意義務違反であると指摘しました。



美術品取引については独特の慣行やしきたりがあると聞いたことがありますが,美術品の世界に限らず,特定の取引では独特の慣行があることがあり,注意する必要がありそうです。




結果として,本件では,原告の請求がほぼ認められることになりました。




なお,本件は控訴されています。









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