高齢化社会と訴訟能力

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今日送られてきた日弁連の「自由と正義」の懲戒処分の中に,保佐審判を受け,脳梗塞により長期間入院していた高齢者と面談などして意思確認せずに訴訟委任を受け(共同原告であった娘を通じて訴訟委任状を受け取ったということです),訴訟提起したところ,訴訟能力がないとして裁判所から訴え却下されたという事例が載っていました。




訴訟能力というのは,自分の権利を守るために有効に訴訟したり(原告側),訴訟を受けて立つ(被告側)ための能力で,これがないと訴訟手続きを進めることができないとされています。



今回の懲戒事例は,そもそも依頼者と会わずに訴訟委任状を受け取ったという委任を受ける際一般のモラルの問題だと思いますが,少し幅を広げて,高齢化社会と訴訟能力ということで考えると,依頼者と面談したものの,言っていることがちぐはぐで判断能力に問題がある場合にどうすべきかということが問題になることも増えるかと思います。




訴訟を提起する側(原告側)と訴訟を起こされる側(被告側)で分けて考えると,前者の場合,判断能力がない人のために訴訟を提起しようという場合には,成年後見人を付けることによって対応することになります。

成年後見人は本人のための法定代理人であり,少なくとも財産上のことに関しては単独で本人のために訴訟提起することができます。

交通事故などで植物状態などになってしまった人のために,成年後見人を付けてから,保険会社に対して示談交渉をしたり,訴訟提起したりすることはよく行われています。



なお,判断(訴訟)能力がない人のための制度として,特別代理人という制度もあります。
民事訴訟法35条に規定されているのですが,これは,条文上,判断能力のない人に対して訴訟を起こそうとする人が利用するための制度です。

この規定を類推適用して,判断能力のない人のために訴訟提起したいという場合に,(継続的に報酬も支払わなければならない)成年後見人は付けたくないが,その訴訟のためのみ活動する単発の特別代理人をピンチヒッター的に付けてもらって訴訟提起できないかということについては(その分報酬も助かる),否定する裁判例があります(名古屋地裁昭和46年10月16日)。禁治産宣告(現在の成年後見)という手段があるのだからそちらを利用しなさいということになっています。



現在では,市町村長による後見の申立も盛んになっており,身寄りがいない人であっても,わりと成年後見人が付けられやすくなっていますので,このように考えてもあまり問題はありません。




特別代理人の利用が問題になるのは,むしろ,判断(訴訟)能力のない人に対して訴訟提起しようとする場合です。



訴訟能力がないと訴え却下になってしまうので,訴えようとする相手に訴訟能力がない場合,訴えたい側は自分の権利の実現が出来なくなってしまいます。



とはいえ,訴えようという相手に訴訟能力があるかどうかなんてことは分らないことが通常ですので,普通はあまり気にしません。




ただ,訴えたい相手が植物状態であることが明らかであるとか,何らかの事情で判断(訴訟)能力がないといことを知ってしまった場合どうすべきかといことは問題になり得ます。




こういう場合民訴法35条に特別代理人の制度が規定されていますが,条文をよく読むと,「被後見人に対し訴訟行為しようとする者は」となっていて,訴えたい相手が被後見人であることが前提になっています(条文上は,後見開始になっているが何らかの事情で法定代理人である後見人が゛いない場合というあまり考えられないことを規定していることになっています)。




こちらで後見人まで付けてあげてから訴訟提起出来ればよいでしょうが,赤の他人であるような場合そんなこともままなりません。



そこで,こういう場合には,民訴35条が準用されて,特別代理人の選任申立てができるものとされています(東京高裁昭和62年12月8日 心神喪失の状況にあるがまだ禁治産宣告を受けていない場合にも民訴訟56条・旧法の準用により特別代理人の選任を求めることができるとされています)




高齢社会の進展に伴ってこのような特別代理人の選任事例も増加していくのではないかと考えられます。





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