判例タイムズ1377号で紹介された東京地裁平成22年12月8日の判決例です。




本件では,人材派遣業を営む株式会社から委任を受けて消費税と地方消費税の申告を行った税理士の債務不履行責任が問われました。



その会社では経理担当の従業員がおり,ソフトを使っての記帳処理をしていましたが,本来,課税仕入れに含まれない雇用関係にある派遣対象者に支払った賃金・給料を「労務賃金」として計上してしまい,税理士も,これをそのまま受け入れて課税仕入れ額に含めて納付額を算出したことから,3期に亘って過少申告となり,合計約4000万円の消費税と地方消費税の過少申告が生じました。

そして,税務調査に入られたことから,これが発覚し,上記本税のほか,過少申告加算税約420万円,延滞税約165万円も課されてしまったことから,税務申告の委任を受けた税理士としての注意義務を怠ったとして損害賠償請求がされました。






本件のそもそもの原因は,原告の経理事務担当の従業員が,会計ソフトの設定を誤ったことにありました。

しかし,設定の際に当該従業員から税理士に対して設定の適否について確認を依頼されていたこと,また,消費税の過少申告がなされた事業年度はそれまでの事業年度に比較して,課税仕入れ額が不自然に増加していて(例えば,その前年の課税仕入れ額が約3836万円であったのに対し次年度のそれが約2億7000万円に増加しているなど),税理士として疑問を抱いてしかるべきであったとされ,裁判所は税理士の注意義務違反,債務不履行責任を認めました。




賠償すべき損害として,過少申告加算税,延滞税のほか,その支払いのために金融機関から借り入れた分の利息,修正申告に際して改めて公認会計士に対して二重チェックしてもらったコンサルティング費用約30万円も認めました。税理士側は,修正申告については税理士側で行っており公認会計士のコンサルティングは不要であったと反論しましたが,その時点で税理士に対する信頼は失われており,第三者によるコンサルティングを依頼することも妥当であるとされています。




ただ,税理士から支払われる損害賠償金に対し課税される法人税や住民税,事業税については,賠償すべき損害にはならないとされました。




なお,税理士側からは,経理担当従業員のミスがあったなどとして過失相殺の反論がされましたが,裁判所は退けています。




結果として,合計約896万円の賠償が命じられています。





本件は控訴後,和解がされているようです。





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